
中央左の街並みが僕が出発してきた飯能市街、中央奥から右にかけての山並みは青梅や八王子の辺りだろう。
手前の山と山の間を、僕は登ってきたと思う。
ここは特に峠というわけではないが、一瞬、第一目的地の顔振峠に乗り込んだのかとぬか喜びした。

写真を撮ってる僕を、畑仕事のご主人と来たのであろう犬が、日向ぼっこをしながら見ている。
ここまでですでに疲れていたが、この眺望の様に気分も晴れ渡り、また自転車を漕いでいけた。
上り初めに思っていた、こんなとこ来なければよかったとか、いつ引き返そうかとか、そんな甘えは考えなくなった。
ここに来た以上は、この山を楽しまなければいけない。

1km近く行くと、北向地蔵に到着。
北を向いて建っているので、後光が差しています。
天明年間に流行した悪疫を防ぐために建立されたお地蔵様だ。
現在では、男女逢瀬を取り持つ縁起地蔵として親しまれているらしい。
僕が北向地蔵に着くのとほぼ同時に、ハイキングコースから大学生らしい男二人組みが登ってきた。
たぶん、僕が途中で引き返したダートコースが、その登山道に繋がっているのだろう。
僕の自転車を見て片方が、
「俺、今年は富士山5合目まで自転車で登ったんだよ。しかもママチャリで」
「すげェじゃん」
「だから来年はもっと上まで登ろうと思ってんだ」
などと話している。
男女逢瀬を取り持つ地蔵の前で、山にまみれた男3人が出くわした。
…無言のまま、互いに意識しつつ別れた…。
たぶん、僕と同じような志しを持っている若者だろう。
挨拶くらいしとけば良かった。
北向地蔵からさらに登る。
自転車を降りたり漕いだり、無理のないよう進んでいくが、いっこうに顔振峠に着く気配はない。

『熊に注意』
熊!?熊が出る可能性もあるということか。
確かにこの山並みなら、いてもおかしくない。
そうそう出くわしはしないだろうが、少し怖い。
ここは国道や県道ではなく、林道なのだ。
この写真を撮る時に熊の顔にズームしたら、熊が僕に向かって襲ってきた。
(え!?絵の熊の中から本物の熊!?)
…と思ったら、ありえないけど思ったら、向こう側からの風で熊の絵が僕の方にめくれ上がっただけだった…。
顔振峠まで2.65kmとある。
先は長い。
敵の最前線に辿り着く前に怖気付いたりしてはならない。
熊は敵の突撃部隊と考える。
突進してきたら、軽くさばいて崖下に落としてやればいい。
この前、合気道の映像を観たばかりだ。観ただけで出来ないけど。
〜続く〜





























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