2008年02月28日

ベトナム編9 〜自転車を借りて〜

義弟の実家には、義弟のお姉さんとその娘さんが一人、そして母親が暮らしていた。
家の隣りは、義弟の別のお姉さんの家。
逆隣りに母の妹の家、さらに隣りに母のお姉さんの家。
書くとよく分からないだろうが、親族が近くに住んでいるわけだ。

僕らの到着を知って、親族の方々が家にやってきた。
「お母さんのお姉さんです」
義弟に紹介される。
「お母さんの妹です」
義弟に紹介される。

さらに孫や子も次々にやってくる。
自転車で乗り付ける子、畑の向こうから走ってくる子、義弟も名前を覚えられないほどの人数だ。

犬と牛と.jpg

子供たちは僕を無視して、初めて会う1歳児の姪っ子に近寄っていった。
そして、犬や牛と遊んでいる。
まぁいい、どうせ言葉も分からないし。
僕はココナッツジュースを飲みながら、手持ち無沙汰だ。

犬と牛はなつっこいが、大人のアヒルは攻撃的だった。
ガーガー言いながら、闖入者である僕を威嚇してくる。
背中を見せると一気に間合いを詰めてくるので、面と向かったまま後ずさりした。
その周りをアヒルの子供たちが何匹も走り回っている。


フルーツを食べた後、僕は少し散歩でもしてこようと思いたち、カメラを持って出掛けた。
道に出て歩いていくと、すぐに汗が噴出してくる。
帽子を被ってくれば良かったかな。

自転車で走ってきたおじさんが、僕をじろじろ見てくので「ハ〜イ」と挨拶したら、すごいはにかんでた。
僕は色白でメガネにカメラ姿。典型的な日本人だ。
ホーチミンと違って、ここでは外国人が珍しいのだろう。

トラクターが.jpg

トラクターが往く。
道にはアヒルだか鶏が走り回っている。
こんな風景の中を歩くのは初めてだ。

あまり遠くに行くと戻れなくなるので、引き返した。
自転車さえあれば、もっと遠くに行けたのに…。

家に戻ると、庭先に自転車が置いてあった。
(これなら遠くに…)

妹に聞くと、義弟の姪っ子の自転車らしい。
僕はそれを借りることにした。

自転車を借りて.jpg

菅笠も被って、準備万端。
いっちょ行ってくっか。
僕は自転車に跨った。

乗った瞬間に気付いた。
ハンドルが右に曲がっている!
しかもネジが緩いのか、グラグラだ。

僕は畑に突っ込みそうになった。
気を取り直して、改めて走り出す。

また畑に突っ込みそうになった。
なんとペダルも傾いている!
これでは漕ぐとバランスを崩してしまう。
しかもハンドルは緩々なので、手ではバランスを取れないのだ。

(まぁ、舗装路に出ればなんとか…)
ここ一年ほど僕は自転車を乗り回して、軽めの岩場も登ったし、木の段差も下ってきた。
それなりに自信はある。

畑の間の道をフラフラになりながら漕いでいき、ようやく舗装路に出た。
舗装路に出て気付いた。

ブレーキが効かない!
僕は草むらに突っ込んだ。
ハンドルも効かないので、進行方向の微調整も出来ない。
少し走っただけで、僕は引き返した。

なお、夕方にこの自転車の持ち主である娘さんが、普通にこの自転車に乗っているのを目撃した。
しかも大きな籠を抱えながら、片手運転で畑の中のガタガタ道を走っていた。
その子は中学生で、遠くの学校にもこの自転車で40分かけて通ってるという。
僕は自信をなくした…。


お昼ご飯の時間になった。
もてなし料理として、エビや豚の耳が出された。
モロに僕の苦手な食材だが、御もてなし料理を食べないわけにはいかない。
なんとか食べたが、やはり苦手だった…。


「お兄ちゃん、一緒に出掛ける?」
昼食後、義弟が村の友人たちに会いに行くと言うので、僕も付いていく事にした。

   〜続く〜
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2008年02月25日

ベトナム編8 〜田舎へ〜

旅行3日目の朝は、5時起きだ。
昨夜もあまり眠れなかったが、姪っ子に頭を叩かれて起こされた。

今日は、義弟の実家に行くことになっている。
場所はどこだか分からないが、ホーチミンから5〜6時間かかるらしい。

車を頼んであったので、6時半に迎えがきた。
ベトナムではレンタカーを頼むと、ドライバー付きで迎えに来てくれる。
車は大きなワンボックスカーだった。

田舎に持って帰るお土産など、大量の荷物を車に積んで出発。
南西に向かって、大きな道を延々と走る。
通り掛かるバイクを見ていると、大量の荷物を積んでいる。
みんな、田舎からホーチミンに働きに出てきてて、正月で田舎に帰るのだろう。
それで、お土産がどっさりなわけだ。

5人乗りで走っているバイクもある。
父母、子供3人、一家揃っての帰省だろうか。
一番小さな子がハンドルと父親の足の間に立って、母親はバイクの後ろからはみ出すように乗り、父と母の間に子供が2人挟まれている。
この状態で、数時間も走るのはつらいだろうなぁ。

他にも2人乗りで、後ろの人が自転車を逆さまにして肩に担いで走っているのを見掛けたが、ベトナム人は体は細いのに逞しいもんだ。

僕が今乗っているレンタカーは、10人以上乗れるほど大きい。
そこに、ドライバーと僕らの家族5人だけ。
本当は義弟の妹と末弟が一緒に来るはずだったが、仕事が忙しくて来れなくなった。
車内にはスペースが空いていて、僕も自転車を持ってくれば良かったと後悔する。


途中で、フランスパンのサンドイッチであるバイン・ミーを購入。
僕のバイン・ミーには、ハサミムシみたいな虫が生きたまま入っていた。
もちろん、具ではない。いつの間にかに食材に紛れていたのだろう。

バスが走ってきたが、バスのドアは開きっぱなしで走っている。
停留所で停まると渋滞になってしまうため、バスに乗りたい人はバス停前を低速で走り抜けるバスに飛び乗らなければならない。
アクション映画みたいだ。


出発から2時間ほど経って、ドライブインで休憩。
半分近く来たかな。
ずっと大通りを来たが、横断歩道などないので歩行者が道を渡る時は危険だ。
ホーチミンよりバイクが減った分、車が増えてスピードも出ている。
中央分離帯のコンクリート壁があるので、歩行者は1mほどの壁を乗り越えていかねば渡れない。
壁の上に立って交通が途切れるのを待つ人を、けっこう見掛けた。

メコン川の橋.jpg

ドライブインを過ぎてまた大通りを行くと、大きな橋があった。
近年完成したばかりのベトナム最大の橋だ。
下を流れるのはメコン川で、船が行き来するので橋が大きいのだ。

橋の上からはどこまでも続く森が見える。
山はなく、どこまでも平野だ。
あの森の向こうへ行ってみたくなる。

田舎への道.jpg

橋を渡ると、風景が田舎っぽくなってきた。
いくつもの小さな橋を渡り、湿地帯を走り抜ける。
水辺には民家が広がる。
道沿いに街があり、道とクロスする川沿いに民家が続く。
あの川の向こうへ行ってみたくなる。

大通りを外れて、村々の間を抜けていく。
長閑だが人は多く、活気に溢れている。
こんな田舎にもインターネットカフェの看板があってびっくりする。

この辺が義弟の実家かと思ったが、さらに奥へ。
村を抜けると森の中の道になり、また村が現れる。
ますます田舎になっていくが、狭い道を80km以上のスピードで走っていくので怖かった。
道にはアヒルが走り回っている。

田舎へ.jpg

そして出発から5時間。
11時半に田舎に到着。
車の中はクーラーが効いてたが、降りた途端に汗が噴出す。

   〜続く〜
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2008年02月16日

ベトナム編7 〜自転車投入〜

お昼にフォーを食べた後は、買ってきた地図を見る。
ホーチミン市内は意外に入り組んでいるようだ。

午前中に連れてかれた市の中心部は、今いるマンションからけっこう遠い。
10km以上あり、歩いて行ける距離ではない。

(自転車なら行けるかな〜?)
実は、僕はこのベトナムに自転車を持参していた。
17kgの折りたたみ自転車を、成田空港から重い思いをして運んできてたのだ。

「ベトナムを自転車で走ってやる!」
そう意気込んでいたのだが、先ほどベトナムの交通事情をこの目で見て意気消沈した。
(あんな場所を走れるはずがない!)

僕は地図を見ながら、ホーチミン市内を想像上で走ってみた。
バイクの河。
途切れない流れ。
交差点という交錯点。
(うん、絶対事故るな…)


夕方、妹夫婦がスーパーに買い物に行くと言うので、僕も付いていく事にした。
スーパーまでは、大きな道路で一本道。
これなら自転車でも大丈夫かもしれない。
僕はついに、自転車をベトナムの大地に立てた。


スーパーに行くには、いったん逆方向に走って交差点でUターンしてこないとならない。
中央分離帯があって、道を渡れないのだ。
僕はスーパーと逆方向に走りだした。

1kmほど走って、交差点に到達。
「頑張って〜。先に行ってるよ〜」
妹夫婦の乗ったタクシーが、僕を追い抜いていく。

僕も続いて交差点でUターン。
バイクの行き交うドキドキの交差点を無事にクリアして、スーパーへ向かう。

出発点のマンション前を通過。
すでにヘロヘロだ。
中央分離帯がなければ、2kmも無駄に走らなくてよかったのに…。

バイクに追い抜かれながら、時速24kmほどで走り続ける。
バイクの人々は、珍しい自転車に乗っている僕をじろじろ見ていく。

交差点が見えてきた。
ここの交差点は交通量が多い。
赤信号になったので停止。
停止した横が、露天の自転車修理屋で、なんだか少し気まずい。

青信号になる。
バイクが一斉に走りだす。
初速だけは、自転車の方が速いので、逃げるように交差点を渡って道の端に寄る。
僕の横をバイクが次々に抜いていく。もちろん、僕をじろじろ見ながら。

道の端を走っていれば安全かと思いきや、バイクが道の端を逆走してくる。
この国の道を走るにおいて、安全地帯はどこにもない。

橋を渡って、交差点をクリアして、ようやくスーパーに到着。
僕を心配した義弟が、通りに出て待っててくれた。
僕は、ものすごい汗だくだ。
スーパーまでは12kmあった。
気温30℃以上の中、12kmの全力疾走だった。

スーパーは品揃えも多く、みんな大量に買い物をしている。
時期は1月末だが、ベトナムでは旧正月で、最も盛り上がる時期なのだ。

買い物をして、帰宅。
帰りはのんびりと走った。
交差点は怖いけど、だんだんとベトナムの道にも慣れてきた。
日本に帰る前には、ホーチミン市内を走れるようになっていたいもんだ。
この日は、22.5kmを走った。


夜、義弟の弟夫婦が遊びに来た。
弟夫婦にも、もうすぐ2歳になる子がいて、僕の姪っ子と初対面だ。
愛称がキティちゃんという。

キティちゃんが、僕の姪っ子の前に歩み寄り向かいあった。
キティちゃんと姪っ子の年齢差は5、6ヶ月か。キティちゃんの方が大きい。

キティちゃんが姪っ子の服を掴んだ。
両者が見つめ合う。
お互いに笑った。

次の瞬間、キティちゃんが姪っ子が手に持っていた玩具を奪い取った。
姪っ子が取り返そうとする。
キティちゃんが逃げる。
そのまま玄関を開けて逃亡し、親に部屋の中央に連れ戻された。

従姉妹同士で段ボール.jpg

キティちゃんが段ボールに座ると、姪っ子もマネして段ボールに乗って遊ぶ。
だが、両者の目線は玩具に釘付けだ。
従姉妹同士である両者は、このことを覚えているだろうか?


夕飯は、アヒルの丸焼きをぶつ切りにしたもの。
僕の苦手な丸ごとタイプだが、弟夫婦が買ってきて奥さんが調理してくれたので、食べないわけにはいかない。
かなりのご馳走なのだ。

香草といっしょに辛いタレに付けて食べるのだが、味は良いが骨が刺さりそうで困った…。
夕食後、キティちゃん達は帰っていった。


こうして、旅行2日目の夜は更けていった。
明日は朝5時起きで出掛ける予定だが、やっぱり暑くて眠れない。
そんで、窓の外にはクラクションの音。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 03:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

14日

一昨日は2月14日だった。

僕は終電間近の電車で帰宅中だった。
車窓の向こうに夜景が見える。

ふと、目の焦点を手前にする。
すると、目の大きな美人がにっこり笑って僕を見ているのが窓に映っていた。
(そんなに見るなYO!誰だよ、照れるな〜)

だが、よくよく見ると、車内に貼られた広告ポスターの女性が映っていただけだった。
どうりで目が大きくてにっこり笑ってるはずだ…。

地元の駅で降りると、ホワイトチョコを購入して、午前1時に帰宅した。
こういう機会でもないと、チョコも食べなくなってしまったなぁ。

ホワイトチョコは美味しかった。
ニックネーム SNJ at 02:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年02月11日

ベトナム編6 〜ホーチミン市内〜

ベトナムの信号機には、カウントが付いている。
赤、青の表示の下に、信号が変わるまでの秒数が表示されているのだ。

青信号なら、カウントが0になれば赤になる。
赤信号なら、カウントが0になれば青になる。

なお、自分の進んでいる方向の信号が赤になって、それとクロスする信号が青になるまでの間がない。
日本なら2秒近く、両方が赤信号になっている間がある。

基本的に信号は少ないが、市街中心部には信号が増えてきているようだ。
信号がなければ、無法地帯だ。

一方通行.jpg

バイクの流れをスムーズにするために一方通行も多く、大きい交差点を左折するには一旦右折し、小さい交差点を左折し、さらに左折し、迂回してきて右折する。
するとようやく、最初に行きたかった方向に進める。
こうして交通ルールが保たれている。

道を往くバイクや車には、接触の傷などは少ない。
意外にもベトナム人は、みんな運転が上手なようだ。


その中を、僕は義弟の運転するバイクの後ろに跨って進んでいく。
赤信号で止まった。
僕の周りは、停止するバイクで囲まれる。
赤信号がカウントダウンしていく。

10、9、8、7、6、5、4…ブォン、ブォン!

残り3秒くらいから、周りのバイクがエンジンを吹かし始める。
クラクションが鳴り響き、残り1秒で最前列が見切り発車する。
後ろのバイクも次々にスタートを切る。

だが交差点には、まだ横切っているバイクが通り抜けきってない。
それどころか、次の信号を待たずに横切ってしまおうと突っ込んでくるバイクも多い。

バイクの列と列が、クラクションをかき鳴らして交錯する。
横切るバイクはスピードに緩急を付けて、なんとか切り抜けていく。
それが交差点ごとに繰り返される。

右折したいのに、道の右端に寄れなかった場合も怖い。
右後方に注意しながら、無理やり寄っていく。
そうしないと、交差点内に取り残されて危険だ。

「怖いね〜」
「すごいね〜」
僕と義弟の会話はそれだけだ。

右折車が多い時は、とにかくコーナーのインを突いて、道から外れて店の軒先を走り抜ける。
香港映画のようだ。

ホーチミン裏路地.jpg

そんなこんなで、義弟の兄貴のお母さんの家に挨拶に来た。
大通りを外れた裏路地で、雰囲気が良い。
フルーツをご馳走になって、また大通りへ出る。

統一会堂.jpg

統一会堂に到着。
旧南ベトナムの大統領官邸だ。
中も入りたかったが、素通り。

中央郵便局.jpg

中央郵便局。
フランス統治下時代の建築物だ。

聖母マリア教会.jpg

聖母マリア教会。
市内には、このようなヨーロッパ風の建築物が多い。

本屋横の像.jpg

その後は、ベトナム通貨へ換金し、本屋で地図を購入。
この像は、本屋の横の店先にあったもの。僕の友人に似ている…。

フォーを作る店員と.jpg

お昼ご飯用に、フォーをお持ち帰りで買う。
手際良くフォーを作る店員と写真を撮ってもらう。

フォー.jpg

12時半過ぎに帰宅して昼食タイム。
苦い思い出のあるフォーだったが、けっこう美味しかった。
食べてばかりいるな…。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

ベトナム編5 〜放置民〜

美味しく朝食を頂いた後、義弟の兄が家にやってきた。
僕にとっては義兄だ。
義兄の子供用に買ってきたお土産の剣玉を渡す。

義兄が帰る時に義弟も一緒にバイクで出掛けるというので、僕も後ろに乗せてってもらった。
向かう先はホーチミン市内の中心部。
前述した通り、道路はバイクの洪水状態だ。
その中を流れに沿って泳いでいかねばならない。

しばらくは義兄と話しながら2台のバイクで併走してたが、その内に義兄は先に行ってしまって見えなくなった。
てっきり、一緒に行くと思ってたのに向かう先が違ったのかな?

洪水は、市の中心部に向かうにつれて激しさを増す。
義弟の運転するバイクの後ろに跨っている僕の横も後ろも、バイクが陣取っている。
僕はビデオカメラを構えていたが、追い抜かれざまに引ったくられないように要注意だ。


道路には、車も走っている。
急いでいる車は、クラクションを鳴らしながらバイクを蹴散らしていく。
と言っても、どかないバイクもいるので、車はこのベトナムでは運転しづらいだろう。
バイクがどかない場合は、対向車線にはみ出して抜いていく。

向こうからバスが走ってきた。
対向車であるバスは、僕の前でこちらの車線に入ってきた。
バイクを追い抜くためである。

バスはこちらの車線に入ったまま、どんどん近付いてくる。
僕の横にはバイクがいて、逃げ道はない。

ブッブ〜!ブッブ〜!

バスはクラクションを鳴らしながら、寸前で向こうの車線に戻っていった。
対向車線に隙があれば、即進入する。
なんなんだ、この国は…。


でも、対向車線にはみ出すどころか、完全に逆走してくるバイクもいる。
流れの向こうから突然現れるので、正面衝突しそうになる。
だが、そいつは迷惑行為ではなく、道を渡ろうとしているだけなのだ。

対向車線を挟んだ向こうの建物に行くには、対向車線を越えなければならない。
対向車線にはバイクの流れが途切れないので、90度の角度で突っ切るのは道を塞いでしまうし不可能だ。
その場合、辿り着きたい場所の手前から対向車線に侵入し、向かってくるバイクを一台一台かわしながら、ゆっくりと対岸に近付いていくしかない。

みんなそうしている。
それが、ルール。
なんなんだ、この国は…。


ホーチミン市内には、いくつもの汚い川が流れている。
川には橋が架かっているが、数が少ないのでどの橋も混んでいる。
橋を渡らなければ、違うエリアには行けないのだ。

日本でも、いくつもの渋滞した橋を見てきたが、それは自動車で渋滞していた。
バイクは自動車の間をすり抜けていけるので、渋滞では便利だ。

だが、ベトナムでは渋滞全部バイク。
すり抜ける隙間もない。


市の中心部に入ると、大きなお店も増えて賑やかになってくる。
…ていうか、クラクションとバイクのエンジン音で、いつも賑やかだけど…。

突然、バイクの流れの中に人が立っていたりする。
その人は、道を渡っている最中だ。
押し寄せるバイクの波の隙を見付けて、一歩また一歩と道を渡っていく。
バイクはスピードこそ出ていないが、生身で道路を横断するのも命懸けだ。

手に大量の料理を持って道を渡る女性がいた。
飲食店の店員だろうか。
道路を挟んだ対岸の人から、料理を届けてくれと言われ、今配達に行くとこなのだろう。
両手にお盆を持ち、バイクの流れの中を泳いでいく。
バイクに接触したら料理を落としてしまうだろう、危険な配達だ。

僕はバイクの後ろに跨ったまま、それらの光景を見ていた。
なんなんだ、この国は…。
馴染めなさそう…。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 02:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

2008年02月06日

ベトナム編4 〜バイクで朝食を〜

暑さとクラクションの音で寝つけず、明け方まで寝たり起きたり。
日本の寒さが懐かしい。

明け方やっと寝ついて、朝7時起床。
僕が起きると既にみんな起きていて、義弟の甥っ子がバイクで義妹を迎えに来ていた。
これから美容師の仕事に行くらしい。
義妹はベトナム語と韓国語を話せるが、僕はどちらも話せないので、手を振って見送るだけだ。


義弟がバイクで朝ご飯を買いに行くと言うので、僕も後ろに乗せてってもらう。
マンション前のベトナム随一の広い通りを西へ向かい、1kmほど走って右折すると狭い道になった。
狭い道にバイクが溢れ、その隙間を縫うようにトラックがクラクションを鳴らして通り抜けていく。

朝の市場.jpg

さらに右折すると未舗装路になり、そこが市場だった。
小さい市場だがたくさんの人々が行き交い、賑わいを見せている。
ホーチミン市街と違って、近辺の建物は低い。
ここはマンションなどが点在する郊外だ。

そこで、フランスパンに肉や野菜などの具を挟んだ『バイン・ミー』を購入。
他にも名前を忘れたが、麺料理を買って帰宅。

来た道を戻るのだが、マンション前の大きい道路には中央分離帯があり、マンション入り口に向かって左折できない。
なので、ずっと先まで走って交差点でUターンしてこないとマンションには戻れないのだ。

     ←←←←←←
   ↓         ↑
  |  |  ||↑|↑
  |二|四||四|二
家|輪|輪||輪|輪
  |車|車||車|車
  |↓|↓||  |

マンションを左手に見ながら1km以上先まで走っていく。
大きめの交差点でUターンだ。
そのためには、自動車の車線を二つ越えなければいけない。
信号はあるが、交差点にはクラクションが響き渡ってなかなか怖い。


HTM交差点1.jpg

まずは、左手の車を交わしつつ左折。

HTM交差点2.jpg

右側通行なので、対面するバイクの群れの右側の位置まで行く。

HTM交差点3.jpg

やっぱり、マスクにサングラスが強盗団のようだ。

HTM交差点4.jpg

とりあえず90度曲がった。
さらに左手の家の方の車線に入っていかないと帰れない。

HTM交差点5.jpg

騎馬隊のようにクラクションを鳴らして突撃してくるバイクの前を左へ抜ける。
急いで駆け抜けないと、バイクの群れの中に逆向きのまま取り残されて危険だ。

HTM交差点6.jpg

ギリギリでクリア!
なんだか障害物を避けるレースゲームのようだ。


バイン・ミー.jpg

こうして帰宅して食べたバイン・ミーは、香草は入っていたが気にならない程度で、とても美味しく2個も食べてしまった。
さらに麺も食べた。
おかしい…ベトナムに来たら食に困るはずだったのに…。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 13:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

ベトナム編3 〜ホーチミン到着〜

機体はホーチミンのタンソンニャット空港への着陸態勢に入った。
高度が下がると民家の窓の灯りが近付いてきて、それが高速で後ろに流れていく。

機首を上げて後輪、前輪の順に着地していく。
前輪が地に着いた大きなショックの後、轟音と共に減速していく。

ゴゴゴゴゴゴ〜!!

揺れと轟音が収まり、着陸成功だ。
一時は、僕は空の上で死ぬかと思ったが、無事にホーチミンに到着した。
成田を経った時は気温6℃だったが、ホーチミンは26℃あった。


入国手続き、荷物の受け取りを済ませ、空港の外へ向かう。
窓の外が見えた瞬間、僕は驚愕した。

到着ロビーの外に、数百もの人が幾重にも連なって並んで手を振っているのだ!
その数は、飛行機で到着した人数よりも多い。

名前の書かれたボードを掲げる人、飛び跳ねながら待ち人を探す人、大声を上げて手を振る人、様々だ。
なんでも、ベトナム人は一家一族総出で空港にお迎えに来ているらしい。
なので、一人の到着を待つのに5、6人も来て待っているのだ。
その様は、ゾンビ映画を思い出す。
空港内はクーラーが効いていたが、外に出た途端に汗をかいた。

タンソンニャット空港到着.jpg

僕らは大量の荷物を2台のカートに積んで、その中を分け入っていく。
通路を塞ぐ輩は、係員がピーピー笛を鳴らして注意する。
人ごみで進めない上に、そこかしこからタクシーの客引きが話し掛けてくる。

ピッピ、ピピーッ!
プ〜ッ!プップ〜!
ボボ〜〜ッ!

ホイッスルとクラクションと人々の喧騒が響き渡る。
まるで何かのお祭りだ。

空港には、義弟の妹、つまり僕にとっては義妹が迎えに来ていた。
僕は義妹の顔を知らない。
妹夫婦が義妹を見付けたらしいが、人だかりのどこにいるのか僕にはさっぱり分からない。

どうにか人だかりを抜けると、義妹が近寄ってきた。
大型タクシーに大量の荷物を積んで乗り込み、マンションへ向かう。
日本を出てから7時間半が経っているが、時差がマイナス2時間なので深夜0時だ。

タンソンニャット空港は、ホーチミン市街の北方に位置する。
向かうマンションはホーチミンの南西部なので、市街地を抜けていく。

深夜0時だというのに、通り沿いにはけっこう人がいた。
暑くて眠れないのか、家の前に出てイスに座って話し込んでいる。
上空から見てずいぶん明るい街だと思ったが、こんだけ夜も賑やかなら頷ける。

だがそれ以上に驚いたのが、道路の交通事情だ。
日本とは逆に右側通行なのだが、僕らの乗ってるタクシーのすぐ前に、突然バイクが飛び出してくる。
しかも二人乗りだ。
いや、ほとんどのバイクが二人乗り以上である。
ベトナムでは車が少なく、その分バイク大国なのだ。

ホーチミンは砂埃や粉塵がすごいので、バイクに乗っている人は、防塵対策でマスクをしている人が多い。
大型のマスクなので、西部劇の強盗みたいに見える。
二人乗りのバイクがマスクで顔を隠し、タクシーを囲んでくる。
まるで強盗団に狙われてる気分だ。

それらのバイクがクラクションを鳴らしながら、我先にと走っているのだ。
負けじとタクシーもクラクションを鳴らす。
後ろ、前、横、いろんな方向からクラクションが聞こえてくる。


交差点が近付くが、信号はない。
タクシーはそのまま交差点に向かっていく。
交差点には数十台のバイクが横切っている。
(どうすんの、これ!?)

タクシーはクラクションを鳴らしながら、バイクの群れに突っ込んでいった。
バイクがタクシーの横から、クラクションを鳴らして向かってくる。
ぶつかりそうになりながらも、バイクはよけていった。
次々にバイクと交錯していくが、一台もぶつからない。

これがベトナムの交通ルールだ!
僕はとんでもない所に来てしまったと思った。


深夜12時半過ぎにマンションに到着。
この日は、そそくさとシャワーを浴びて寝ることにした。

だが!
暑くて眠れない…。
扇風機はあるが、クーラーはない。
窓を開けてあって風は通るのだが、いかんせん気温が高いのだ。

それどころか!
マンションの前の道は、現在ベトナムで最も大きい道路だ。
交通量も激しい。
前述の通り、クラクションを鳴らしまくるのが基本なので、夜通しクラクションが鳴り響く。
うるさくて眠れない…。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

2008年02月05日

ベトナム編2 〜空へ〜

先に言っておこう。
僕は飛行機が苦手だ。

何が苦手かって、空を飛んでいるのが苦手なのだ。
落ちるのはもちろん、高速で飛んでいるのも怖い。
新幹線の4倍の速さだ。

昔、青森旅行の際、青森空港から羽田空港まで飛行機に乗った。
その時、途中で乱気流に遭遇して怖い思いをした。

乱気流の中で飛行袖が急降下したのだろう、子供が泣き出すほどの無重力を数秒間感じた。
まるでジェットコースターだ。

それ以来、飛行機は苦手である。


だが今回は、ベトナムに行くにあたって飛行機に乗らざるを得ない。
なんとか快適なフライトといきたいもんだ。

家族6人で成田空港に着いたのは、飛行機の出発の4時間前。
早過ぎる到着だ。

荷物を預け入れした後、父はベトナムに行かないので一足先に帰宅。
僕と母と妹夫婦と姪っ子の5人で、出発まで2時間半待ちだ。

僕は一人でぶらりと空港内を散策。
空港内には店がいっぱい。
当たり前だが外国人も多い。
僕は外国語が分からないので、外国人がいっぱいいると不安になってくる。

成田空港屋上.jpg

寒風の中、空港の屋上から飛び立つ飛行機を見る。
次々に飛行機が空へと飛び立っていく。
(僕ももうすぐ機上の人となるんだ)
いよいよ海外に旅立つんだ、という実感が湧いてくる。

待っていても暇なので、早めにベトナムへの出発ゲートへ向かう。
そこでも数十分待って、やっと搭乗開始。

母と妹夫婦と姪っ子が前の座席、僕はその後ろの席に座った。
僕の隣りには、間ひとつ空けて商社マン風の年配のおじさんが座っていた。
新聞を広げ、飛行機にも慣れている感じだ。


午後6時過ぎ、JALの機体が動き出す。
夜のとばりが降りた滑走路に、ずらりと並んだ誘導灯が道を作る。
飛行機は何度も方向を変えながら、ゆっくりと地面を走って長い滑走路へ向かう。

そして轟音を上げながら一気に加速すると、飛行機は大地を離した。
けっこうな急角度で空へと昇り、みるみる内に夜景が小さくなっていく。
僕の座席は真ん中辺なので、窓側の席の人たちの隙間から外を覗いている。

離陸後、機内サービスのドリンクが運ばれてきた。
僕はトマトジュースを頼んだ。
こんなとこでトマトジュースを飲めるとは快適だ。

妹はビールを頼んで半分だけ飲み、残りは僕が飲んだ。
飛行機の中で酒を飲んだのは初めてだ。快適快適。


離陸から50分かからない内に、和歌山県上空へ。
去年の春に車で和歌山県に行った時はずいぶん遠いと思ったが、飛行機だとすぐだ。

機内サービスの夕食が運ばれてきた。
僕は牛玉丼を頼んだ。
前の座席の背もたれには液晶テレビが付いていて、映画や音楽、ゲームを楽しめるし、なかなか愉快なフライトになりそうだ。
ついでに日本酒も頼んだ。

備え付けの液晶テレビで、『その時歴史が動いた』や、ジャッキー・チェン主演映画『ラッシュアワー3』を観る。
日本酒を飲みながらテレビを観るなんて、ちょっと空の旅を満喫してるかな。
機内モニターには『時速800km 外気温−43℃』の表示が出ている。

飛行機の中姪.jpg

1歳児の姪っ子が飽きたのか、前の座席から後ろを覗きこんできた。
僕を見付けてニッコリ笑う。
僕の横に座っているおじさんの読んでる新聞をも覗き込む。
おじさんは姪っ子と視線を合わせないようにしている。

姪っ子がティーカップを握って覗きこんできた。
ティーカップを振り回す。
おじさんは見ないようにしている。

姪っ子がティーカップを手放した。
カップはおじさんの足を掠めて落ちた。

「すみません」
僕がおじさんに謝ってカップを拾う。
おじさんは気にしないフリをしている。
僕は冷や冷やもんだ。


機内アナウンスが流れた。
『乱気流です。乗務員は着席して下さい』

(えっ!?乱気流!?)
数年前の記憶が甦る。
だが少し揺れただけで、急降下などはしなかった。
良かった良かった。


少しうウトウトしてきた。
酔いが回ってきたかな?

ラッシュアワー3を観ていたが、寝たり起きたりしてる内にいつの間にかエンディングになっていた。
ちょっと気分を変えようと、ヘッドホンを外した。

その時だった。
耳鳴りがした。
耳鳴りで音がよく聞こえない。

4時間以上ずっとヘッドホンをしていたからかと思ったが、どうも違うようだ。
音が聞こえなくなった後は、目が見えなくなってきた。
呼吸も苦しい。
(これは…酔い過ぎたかな?)

外気温は−40℃以下なのに、なんだか暑くなってきた。
汗をかいていたので、上着を脱ぐ。

そしたら今度は寒くなってきた。
上着を着ても、寒くて寒くて仕方ない。

…と思ってたら、また暑い。
いや、寒い。体温調整もうまく出来てないようだ。
暑いのか寒いのか分からないが、汗をかいている。
冷や汗だ。

目眩と耳鳴りで、吐き気を催してきた。
頭の中がグルグル回っている。
平行感覚も失われた。
いや、飛行機が少し傾いただけかもしれない。

脈拍も遅くなり弱々しい。
心臓が止まりそうだ。
(あれ?…これ、ヤバいんじゃないの…?)

(乗務員に水を頼もう…)
手元のボタンで呼べるが、目がよく見えない。
仕方なく立ち上がって、乗務員に水を貰いに歩いていった。
動かないと心臓が止まりそうだった。

「すみません、水を下さい…」
耳鳴りで自分の声も遠くに聞こえる。
乗務員が水を注いでる間も、視界が真っ暗になっていく。
(血圧が低くなってて、頭に血が来てないんだな…)
それでも、乗務員の名がムックさんであることは覚えた。

水を貰って自分の席に戻るとき、通路に人が立っていた。
僕が水を持っているのを見てどいてくれたが、僕は目の前が真っ暗になり動けなくなった。
今にも気を失いそうだ。
もし気を失ったら、二度と目覚めないかもしれない。

(ヤバいヤバい、今倒れたら水をぶちまける…)
僕は歩けない。
通路に立っていたおじさんは、せっかくよけたのに通っていかない僕を不思議そうに見ている。

数秒の後、僕は一歩一進み始めた。
なんとか自分の席にもどり、水を飲み干す。
だが、まだ水が足りない。

「お兄ちゃんどうしたの?顔が真っ白だよ」
ちょうど妹が話し掛けてきたので、水を注文してもらう。
「手元のボタンで乗務員呼べるよ」
「うん…分かってる…」

水を2杯飲んだが、それでもまだ足りない。
姪っ子の水も貰って飲んだ。
それでようやく脈が回復してきた。
視界が開け、音も聞こえてきた。

飲んだのはビール350ml缶の半分と、日本酒180ml。
ちょっと量を飲み過ぎたが、気圧が低くなっているせいもあるだろう。

視界が回復した後は、液晶テレビでソリティアや上海のゲームをクリアした。
頭も回るようになったし、これならもう大丈夫だ。


『乗客の皆様、当便は間もなくホーチミンに到着いたします』

出発から約7時間、機体が高度を下げ、旋回する。
窓の下にはベトナム随一の商業都市ホーチミンの、煌びやかな夜景が広がっている。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 21:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ

ベトナム編1 〜ベトナムって〜

先に言っておこう。
僕はベトナムが苦手だ。

何が苦手かって、ベトナム料理が苦手なのだ。
あの、香草を使った料理が好きではない。
生春巻なんか、包んだ皮の下にエビが透けて見えている。
僕はエビが苦手なので、生春巻にも魅力は感じない。

ふんだんなエビと香草。
それらを、タイで言うところのナンプラー、ベトナムではヌックマムで味付けするわけだ。
僕は魚醤の生臭さがとても苦手だ。
僕にはベトナム料理は無理だろう。


以前、家族がベトナムへ旅行した。
あ、僕以外ね。

妹がベトナムへ留学して、そのままベトナムで働いて暮らしていたので、両親が会いに行ったのだ。

家族が日本へ戻ってくると、自宅でもベトナム料理を作ってみた。
まぁ、有名なベトナムの麺料理『フォー』だ。
フォーと、皿にどっさり盛られた香草が食卓に並ぶ。
香草をフォーに入れて食べるのだが、僕は香草の匂いが苦手なので、なるべくフォーに入れないようにした。

「ベトナムのお店ではテーブルの上にパクチーがいっぱい置いてあって、みんなたくさん入れて食べてるんだから」
ベトナムへ旅行してベトナム贔屓になった母が言う。
「うん」
僕は返事だけして、香草を食べなかった。

「お兄ちゃん、いっぱいあるからどんどん食べて」
妹にも香草を勧められる。
「うん」
久しぶりの一家揃っての食卓だ。
ここで香草が嫌いだとわめいて場の雰囲気を悪くするのもなんなので、少しばかり食べた。

…不味かった…。
フォーも味気なかった。
食事を終えて寝る時も、香草の匂いが漂ってくるような気がした。


次の日。
夏場で暑かったのだが、どうも違和感を感じた。
やっぱり香草の匂いが漂ってくるのだ。
気のせいではない。

どこから?
食卓には香草はもうないし、匂いが漂ってくるのは自分の部屋だ。

(まさか!?)
僕は服の匂いを嗅いでみた。

香草の匂いは、僕の服からしていた。
昨夜は風呂に入ったし、着替えもした。
つまり、香草の匂いは僕の身体の中から発している。

暑くて汗をかくと、汗に香草の成分が含まれているのか、香草の匂いがする。
夏の最中、僕は汗をかきながら一日中、逃れられない香草の匂いに苦しんだ。


そんな思い出で、僕のベトナムのイメージは出来上がっている。
良いイメージのはずがない。
出来ればベトナムなんかには行きたくない。


以前、ベトナムに住んでいる妹から電話があった。
「お兄ちゃん、ベトナムにいつ来るの?来週?」

なんでも、『僕がベトナムに行きたがっている』というお告げが、占いで出たそうだ。
だが、仕事もあったし、急に行けるはずもない。
「ゴメン、行けないや」
前々から、僕もベトナムへ行ってみるよう家族から勧められていたのだが、ベトナムに行く気なんか僕にはさらさらないのだ。


月日は流れ、妹がベトナム在住のカンボジア人と結婚して日本に戻り、僕に姪っ子が出来た。
妹夫婦は、僕と両親と一緒に日本に住んでいたが、義弟の母親にはまだ孫の顔を見せていない。
姪も1歳になったし、義弟の母に会わせにベトナムへ連れていっても大丈夫だろう。


「海外は一度は行って見ておいた方がいい」

僕自身そういう考えではあった。
この機に乗じて僕もとうとうベトナムへ行くことにした。
海外に行くなら韓国や台湾辺りが妥当かと思っていたが、まさか初の海外旅行先が苦手なベトナムになるとは…。


1月25日昼過ぎ。
僕は、両親と妹夫婦と姪っ子と6人で、成田空港へと向かった。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅は靴擦れ