2005年11月04日

Sporting Chance3 剣道なんか(後編)

イカンガー君に勝った後のこと、友人がトイレで僕の噂話をしているのを聞いた。

「あいつの面、一撃必殺だよな」
「俺、喰らいたくないよ」

なんと、意外にも僕の「面」が一撃必殺の技として認知されていたのだ。
どうやら、僕のスタイルは薩摩の「示現流」だったみたいだ。
示現流は、「肉を斬らせて骨を断つ」だから、僕はそこまで徹底してないが、方向性は「一の太刀」か、「示現流」と言って良いだろう。

そして、最後の七人目との対戦の時が来た。
相手は、ここまで無敗の6連勝を誇る、同じクラスの伊東君。
僕は3勝3敗の成績。
向こうは全勝を掛けて、僕は勝ち越しを掛けての対戦だ。

一本目。
伊東君は牽制しつつ、攻撃を仕掛けてくる。無駄のない動きだ。
僕は、ここぞとばかりに面を放った。
しかし、竹刀は空を切り、床を叩いた。
伊東君の間合いが上手い。
周りからは、僕の面に対して「おぉ〜!」という声が上がる。
少し期待されてたのだろうか…。

次は胴を狙った。
また竹刀が空を切る。
空振ったところに伊東君の攻撃が来る。
僕はすぐに竹刀を前に向けて防ぐ。
伊東君は無敗だけあって、強いと感じた。
決して、ラッシュを仕掛けてくる訳ではないが、的確に攻撃を仕掛けてくる。
もし、伊東君が「小手」をマスターしてれば、僕はすぐに負けていたろう。
それくらい僕の攻撃は大振りだった。

僕も、面と胴しかないので、きっと単調な攻撃をしあっていたと思う。

その内、僕は疲れてきた。
大振りをし過ぎたのだから当たり前だ。
だが、それでも面を立て続けに打ち込み、伊東君の竹刀を横に押しのけてから、面を取った。
これで一本先取。

二本目、伊東君の反撃が来る。
ここは僕が防御に回る。
防御の内に力を溜めて、また一撃で倒そうとしていた。
しかし、逆に隙を突かれ、胴を取られた。

一本ずつ取って、最後の三本目。
僕も伊東君もすでに息が上がっていた。
お互いに単発の攻撃が空を切る状態だ。
僕は、攻撃を胴を多めにし、相手の防御を下げた。
ここで、面を打ったが、竹刀で防がれてしまった。
僕はそのまま引いた竹刀を横から胴に向けた。
手応えがあった。
審判が手を挙げて一本を取った。
二対一で僕の勝ちだった。

なんと、剣道なんかでけんどーの僕が勝ち越したのだ。
自分でびっくりだった。
しかも、無敗の伊東君を倒したのだ。

後日、伊東君が友人と廊下で話しているところに僕が通りがかった時、伊東君はその友人に僕を紹介した。
「コイツ剣道強いんだよ〜。
俺、全勝してたのにコイツにだけ負けたんだ」
伊東君は剣道を通じて僕を認めてくれたようだった。
それまで、彼とはほとんど話さなかったのに、話すようになった。

剣道がホントに楽しく思えてきた。

そして、1年生の剣道授業の最後に剣道のトーナメント戦が行われた。
前の対戦成績から、先生が組み合わせたトーナメントだ。

一回戦は、同じクラスのコータロー君だった。
あまり強そうには見えないが、意外に強かった。
僕は例によって竹刀を振り回したが、コータロー君は有効打を取らせない。
僕は、コータロー君の脇、太股、肩、二の腕など、いろいろな部位に打撃を与えたらしいが、ちゃんと面も取り、勝つ事ができた。
コータロー君は試合後、あまりにもいろんなとこを叩かれた事にぶつぶつ言っていたが、勝負は勝負だ。
逆に、コータロー君がよけるのが上手いから、胴を外れて脇などに当たるのだ。

二回戦は、剣道経験者の山本君だった。
初めての経験者との戦いだ。
山本君は前後のステップを多用し、いつ飛び込んでくるか分からない。
僕は、初めて見るステップに翻弄されて、距離感が掴めない。

面を打ったが、山本君は頭を右に傾け、肩で竹刀を止める。
そのまま僕の竹刀を肩に担いだまま、突進してきて、ついに小手を取られた。
小手を初めて喰らったが、意味が分からない。
そんなん防げるかって感じだった。
竹刀で弾き返したり、竹刀の鍔でブロックするのだろうが、僕にそんなテクニックは無い。

二本目も、変幻自在のステップで惑わされ、僕の攻撃は相変わらず肩で止められる。
今度は肩で担がれない様に、すぐに竹刀を引っ込める。
首振りだけで、僕の攻撃が無効にされるとは…。
実戦の刀なら袈裟斬りになるとこなのに、残念ながら剣道には「袈裟斬り」はない。

やがて、僕の攻撃は手詰りになった。山本君には、どんな攻撃も通じないのだから。
それでも僕は、山本君の攻撃を上手く防いでいた方だろう。

山本君が離れたのを見て、僕は面を打ちに行こうとした。
そしたら、振り被ろうとした手に「小手」が入った。
またもや、何が起きたか分からないままに小手を取られて、僕は敗退した。

さすがに経験者には、歯が立たなかった。
山本君が、もっと本気で来れば、僕は瞬殺されていただろう。
それくらい「小手」は見えなかった。

小手を知って、僕はもっと剣道が好きになった。
残念ながら、二回戦敗退だったが、僕は満足だった。
(剣道、面白いな。もっとやりたいよ)
しかし、2年生になると、授業は剣道から柔道になったのだった…。


僕の父は剣道をやっていた事もあって、日本刀が好きみたいだ。イミテーションの日本刀も持っている。
「これが、胴田貫だ」
そう言って、日本刀を見せびらかされた。
そんなこと言われちゃ僕としては、仕事場の仲間たちから誕生日プレゼントに頂いた、西洋の大剣「エクスカリバー」で対抗するしかない。
重さ4.5kg。正直、振る事もできないが…。

今はもう、父は剣道やれとは言わない。
だが、父と子で、剣を交わして対決するのも悪くないか…。
ニックネーム SNJ at 03:58| Comment(0) | Sporting Chance
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