中学3年の秋頃だろうか。
「受験」の二文字が身に纏わり付く中、同じクラスの小野君とキャッチボールをした。
当時は、ファミコンソフトの「ファミリースタジアム」が流行っており、僕も小野君も野球への関心は高かった。
僕はとりわけ、変化球への憧れが強かった。
速球よりも変化球に美学を感じていた。
キャッチボールに使っていたのは、硬球でも軟球でもなく、ゴムボール。
中でも、表面に縫い目の凹凸が付けられたゴムボールを気に入って使っていた。表面がフラットなゴムボールは変化球が曲がりにくいのだ。
そんな僕らが、キャッチボールをしに公園にやってきた。
受験勉強など知ったことか。
西武ライオンズのファンの小野君と、中日ドラゴンズのファンの僕と、15mほど離れてゴムボールを投げ合う。
小野君はスロースターター。肩が温まるまでは、軽めの投球だ。
かたや僕は、序盤から飛ばす。
カーブ、スライダー、シュートと変化球を投げまくる。
スライダーはコントロールも出来ないし、投げ方もあやふやだが、カーブには自信があった。
横の変化のみを意識し、1m以上曲げる。ゴムボールだから可能な投法だ。
スピードはない。山なりに飛んでいって曲がっていく軌道だ。
ちなみに、シュートもコントロールが悪いので、多投はしない。
小野君も肩が温まり、だんだん球のスピードが上がっていく。
50球くらいずつ投げたろうか。
小野君もカーブを投げ出した。
「俺のは縦に割れるカーブだ」
そう言う通り、横の変化はほとんどなく、縦に落ちる軌道だ。
僕は横、小野君は縦。
カーブの投げ合いが続く。
より曲がるよう、より落ちるよう、工夫がなされていく。
やがて、球数はお互いに100球を超えた。
僕からすると、小野君のカーブはまだまだだった。
曲がらなくてドースル?
オレ様の曲がりを見よ!
そんな感じだ。
今では、落ちる軌道も理解できるが、当時は、カーブというものは横に曲がるほど凄いと思っていた。
だが、カーブでは僕が勝った気になっていたが、球速においては小野君に分があった。
ボールが小野君の手を離れると共に、浮き上がって来るのだ。
まぁ、球の伸びがあるという事だが、ゴムボールで軽いのでかなり浮いて見える。
僕も速球を織り交ぜ始めた。
「このっ!」
渾身の力を込めて投げる。
しかし、自分の目から見て、軌道に伸びがない。
小野君も力いっぱい投げる。
「どうりゃ!」
膝元から腰まで浮き上がってくる。
こちらも負けちゃいられない。
「はぁっ!」
「ふんっ!」
投げ合いは150球を超えた。
ゴムボールとは言え、さすがに肩が疲れてきた。
それでも、投げ合いは続く。
どちらも、やめようとは言わなかった。
秋の日も暮れてゆく。
200球を数えた。
もう暗くてボールも見えない。
それでも、やめようとは言わない。
一心不乱に投げ合うだけである。
「くらえぇぇい!」
暗闇を切り裂く小野君の速球が僕の手に納まった頃、日が完全に暮れた。
「ふぅ…もうそろそろやめるか…」
結局、お互い二百数十球も投げ合い、その日のキャッチボールは幕を閉じた。
この後に、これ以上の球数を投げた事はない。
二人とも、前途洋々の中学3年生であった。
2005年11月11日
Sporting Chance6 果てなきキャッチボール
ニックネーム SNJ at 12:02| Comment(2)
| Sporting Chance
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このままエッセイ漫画にしてもいいくらいデスよ。
前にriverebdさんと一緒に、車で公園行った時、キャッチボールくらいしたかったですな〜。
僕の弾丸カーブを喰らわせてやります。