2008年05月15日

自転車奇行・ぶらり編4 〜金沢〜

たまたまパンク修理をしていた若者と連れ立って、金沢へ向けてのサイクリング。
いや、サイクリングなどという生やさしいもんではなかった。

「雨、痛いっすね〜!」
突き刺さる雨。
押し返してくる向かい風。
カッパのフードは後ろにめくれ、ズボンは完全に濡れ、靴の中にも水が溜まっている。

「まるで台風ですよ、これ!」
「手が、かじかんできました!」

登り坂を終えての待望の下り坂も、危険なのでスピードは出せない。
転ばぬように、ゆっくりと下っていく。

「あ〜、コンタクトにしなきゃ良かった〜」
若者は、雨に顔を攻撃され、目も開けられない状態だ。
僕のメガネも雨で視界が遮られ、ぬぐっても内側にも雨が溜まっていて、視界が確保できない。
鼻の中にも雨が入り込み、鼻水だか雨水だか、もう分からない。

陸橋の下で一旦休憩し、カッパの下に上着を着込む。
陸橋の上の国道8号に沿っていけば金沢市内に辿り着くのだが、どうもバイパスのようになっているようだ。
自転車通行禁止とは書いてないが、歩道はないと書かれている。

「下の道を行きますか?」
「そうですね、上は自動車専用道路かもしれませんね」

下の道を行くと線路に遮られて、線路沿いに走っていったら元の場所に戻ってしまった。
やはり、バイパスを行かねば先に進めない。

仕方なく国道8号に入り、車が水飛沫を上げながら通り過ぎる横を、時速17kmほどで走っていく。
視界は悪く、路面も水が溜まってるため、かなり危険な走行になった。

僕が先行し、後ろから若者が付いてくる。
僕はロードだが若者はMTBなので、同じ力で漕いでいても平均時速で2〜3kmほど僕の方が速い。
離れてしまわぬように後ろを見ながら走る。
後ろに連れがいるだけで、なんとなく心強い。
もし、こんな雨の中のバイパスを一人で走っていたら、心が折れそうだ。

共に走り始めてから20kmくらい走ったろうか。
金沢市内に入ったものの、金沢駅に辿り着けない。
道路の標識は雨で霞んで、近寄らないと何て書いてあるかは不明瞭だ。

「あれ、さっきこっちに行ったら兼六園て書いてあったのに、また国道8号に戻ってきましたよ」
「ていうか、これ孫速道路ですかね?」

軒下で休憩して、携帯で現在位置を確認。
「あっちですね。行きましょう」

でも、確認しても迷う。
「迷いました。さっきの軒下に戻りましょう!」
手がかじかんで携帯のボタンも押せない。

「しっかし寒くなってきましたね〜」
「たぶん明るい内に着くでしょうけど、あとちょっとが分かりませんね」

金沢市内に入ると、他の地名の表記ばかりで金沢駅がどこにあるか分かりにくい。
とりあえず、川と線路に沿って走っていけば、どこかの駅に着くはずだ。

駅が見えてきた!
しかし、それは東金沢駅だった。
だが、もう一息だ。休んではいられない。

自転車を担いで歩道橋を登り、線路の向こうへ渡る。
あとは、この線路に沿っていけば金沢駅だ。

「もうすぐ金沢駅ですよ〜!」
若者が言う。
「そうですか、ようやく着きますね!」

ここまで25kmを二人で走ってきた。
その旅も、もうすぐ終わる。
もっと一緒に走っていたい気もするが、この雨の中はもう走りたくない。

「あっ!ここ渡ったら金沢駅ですよ!」
若者が叫んだ!

「やった〜!!」
ついに金沢駅に到着だ!
二人ともガッツポーズだ。

ギィ〜〜〜

鈍いブレーキ音を立てて、金沢駅前に自転車を停めた。
すぐに荷を降ろし、タオルで顔を拭く。

「ちょっと新しいタオル買ってきますわ」
若者のタオルはもうビチョビチョだった。

しばらくすると若者が戻ってきた。
「どうぞ、手伝ってくれたお礼です」
「あ、ありがとうございます」
僕に温かい缶コーヒーをくれた。
そのコーヒーはとても美味しく感じられた。

「いや〜、パンクの時はどうなることかと思ったけど、着いて良かった〜」
「そうですね、あそこから二人で走って良かったです。心強かったですもん」
「ホントですよ〜。一人だったらあんな道、走れないですよ。いや、走れるだろうけど、かなりへこんでたと思います」

パンク修理を手伝ったせいで30分近くロスしたと思うが、もしあのまま素通りしていたら、あのバイパスでかなり悩みながら走ったろうし、金沢駅に辿り着くのも余計に時間が掛かっていたかもしれない。

たまたま彼がパンクし、僕が追いついてきて出会い、雨も風も強くなって、二人で走り出し、二人で迷い、でも今こうして金沢駅に一緒に立っているのが不思議だ。

「あの…お名前は…?」
「あ、田中と申します」
「私はエビサワといいます」

そこで初めて名乗りあった。
短い時間だったが、こんな大雨の中を走ってきて、なんだか戦友と思えてくる。

「田中さんは、この後はどうするんですか?」
「僕は今から兼六園行こうと思ってましたが、この雨では行けそうもありませんね。時間ももうないし。エビサワさんは?」
「俺は明日、金沢から輪行して東京に帰ります」
「そうですか。僕は明日は兼六園行って、福井の方へ回ろうかと思ってます」

「またどこかで」
「また会えたらよろしく」

そう言って、僕らは別れた。
せっかくなので夕飯でもご一緒したかったが、お互いずぶ濡れなので店に入って席に座る事はできない。
もう一生会う事はないかもしれないが、一生忘れる事もないだろう。

夕闇迫る中、僕は兼六園の場所だけ見ておこうと思って兼六園に向かったが、暗いし雨だしで、やめた。

食料を買って、宿にチェックイン。
部屋に入るとすぐに風呂に入り、リュックから靴から上着から全部洗った。
服を振り回して水を切ったり、ドライヤーで乾かしたり、大忙しだ。

そんなんで夜も更け、気が付くと午前1時過ぎ。
明日も早いから寝なくては。

   〜続く〜
ニックネーム SNJ at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 自転車奇行2008
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