2006年01月17日

龍勢、飛ぶ。

埼玉県秩父郡の吉田町には、「龍勢」という伝統がある。
直径十数cm、長さ1m近くの木の筒に火薬を詰めたものを、20m近い長さの竹棒に縛り付け、点火して上空高く打ち上げる。
つまりは、巨大ロケット花火である。

江戸時代以前から受け継がれている、とてもエンターテインメント性に優れた伝統で、龍勢祭りというのもあり、なかなかに有名だ。
詳しくはこちら。(ちなみに吉田町のマスコットキャラ「りゅうごん」は、石ノ森章太郎デザインです)
「Web Guide 秩父」
http://www.chichibu.co.jp/topic/199810/ryusei/

他にも、「つきなみCOMICS」というホームページで、龍勢祭りの事を楽しく書かれていました。勝手にリンクしときます。
http://www2r.biglobe.ne.jp/~TSUKI/ryusei.html


僕の田舎の秩父の祖父は、ロケット花火の事を「龍勢」と呼んでいた。
吉田町は秩父郡なので、秩父の人のロケット花火のイメージは龍勢なのだろう。
だから子供の頃は、僕の中でもロケット花火は龍勢という名称だった。
確か、店で売ってるロケット花火にも「龍勢」とプリントされていた。

僕は秩父に行くと、その龍勢(普通のロケット花火)で遊んでいた。
庭の柵にコーラの空きビンを斜めに立て掛け、中に龍勢を入れて火を点けて飛ばす。

シュンッ!
ヒュ〜〜〜ルルル…
パーン!

勢い良く飛び出した龍勢は、夜空に光の弧を描きながら、ヒュ〜という音を立てて飛んでいき、パーンと弾ける。
そしてその音が山にこだまする。
それはそれは楽しい遊びだったが、飛んでったゴミは片付けなかった…。
火薬の入れ物に少しプラスチック素材も使ってあった気がするな…。

田舎の家は、道路から階段を上ったところにあり、庭の柵の下は石垣になっていて、その前が道路になっている。道路の向こうは10mの崖だ。
なので、庭から崖の方向に龍勢を飛ばすと、けっこう飛んでくれて楽しかった。

ある日、昼間ではあったが、妹と一緒に、大量に買ってきた龍勢を飛ばそうとしていた。
一箱丸ごと買ってきたので、30本…いや、40本近くはあったかもしれない。
僕が柵にコーラの空きビンを立て掛け、1発打ち上げた。

ヒュ〜ルルル…
パーン!

昼なので光は見えないが、音は聞こえるし、龍勢の軌道も目視できる。
妹も喜んでいた。
たまに下の道に車が通るので、そういう時は車が通り過ぎるのを待ってから龍勢を打ち上げる。

何発か打って、僕がまたコーラのビンに龍勢を仕込んでいる時だった。
「お兄ちゃ〜ん!」
妹が大きな声で僕を呼んだ。
見ると、妹が火の点いたマッチか線香を落としたのか、龍勢の入った箱が燃えていた。
中には大量の龍勢が入っている!
僕は慌てて火を消そうとしたが、龍勢のいくつかは、導火線に火が点いてしまった。
(マズイ!)

シュボッ!シュボッ!ヒュ〜ルルル…

箱から龍勢が何本か飛んでいった。
斜めのコーラビンからではなく、地面に置いた箱から飛んだので、軌道は低い。
水の入ったバケツは用意してあったと思うが、大量の龍勢が水浸しになるのがもったいなくて、水がかけられなかったと思う。
それに、そんな間はない咄嗟の出来事だ。
また何本かが飛んだ。

シュボッ!シュボッ!
カンッ!

龍勢が柵に当たって跳ね返り、僕の足元をすり抜け、地面を這っていく。

シュボッ!カンッ!ヒュ〜ルルル…
シュボッ!パーン!パパーン!

妹の方にも、飛んでいく。
柵に当たって跳ね返り、家に当たって跳ね返る。
僕は龍勢の軸を押さえていたが、火薬の勢いで手からすり抜けていく。

シュボッ!シュボッ!

下の道にも龍勢が落ちていく。
もうすでに、箱は炎を上げて燃えていた。
次々に点火される龍勢。

シュボッ!シュボッ!シュボッ!

次々に飛び出す龍勢。
その時、下の道の向こうから車が来るのが見えた。
(ヤバイヤバイ!車が来た〜!)
僕は懸命に手で押さえたが、無情にも龍勢は飛んでいく。
(アチチ、アチ!)
箱は燃え、導火線も煙を上げ、龍勢が火を噴き飛んでいく。

シュボッ!
ヒュ〜ルルル、ヒュ〜ルルル、シュボッ!カンッ!
パーン!ヒュ〜ルルル、パーン!

(もうダメだ、後でスゴイ怒られるな…)
僕は諦めた…。
だが、車に当たるかと思われた龍勢は、無事に(?)車の上を飛び越えていった。
車に乗ってた人は焦ったろう。

ヒュ〜ルルル、ヒュ〜ルルル、パーン!パーン!パーン!

………静寂が訪れた…。
辺りには、白煙と共に、飛び損なった龍勢の残骸が大量に残っていた。
せっかく楽しみに買ってきた大量のロケット花火が、一瞬にしてなくなった。
もう妹を怒る気にもなれず、僕らは祖父母に気付かれない内に、後片付けをしたのだった…。
ニックネーム SNJ at 05:38| Comment(0) | 思い出ボロボロ
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