2006年02月27日

Sporting Chance17 3秒で負けたケンカ

殴り合いのケンカなどした事もなかった僕だが、一度だけそういう機会があった。

中学3年の時の事だ。
放課後、僕が帰ろうとして下駄箱を開けると、運動靴がない。
どこにいったのかと辺りを見回すと、陸上部の三上君と城下君が笑いながら僕の靴を持っていた。一人、片方ずつだ。
僕と彼らは仲も良い。ちょっとしたイタズラだ。

返してもらおうと三上君に近付くと、持っていた靴を城下君に投げた。
城下君に近付くと、三上君に投げる。
そうしながら、外に出て行ってしまった。
僕が上履きで外に出られないのを見越しての間合いだ。

僕はきっと、だんだん腹が立ってきたのだろう、上履きのまま外に出て三上君に近付くと、
「返せよ!」
ミドルキックを放った。

三上君のお尻を蹴ったのだが、よほど痛かったのか、「イッテ〜」と、すごい形相でこちらを睨んでいる。

(あれ?もしかして、蹴りすぎちゃった?)
僕は宣戦布告をしてしまったようだが、蹴り終えた時点で、すでに戦意はない。

三上君が突進してきた。
50mを6秒の脚力だ。僕が避けられるはずもない。

三上君は突進と同時に飛び膝蹴りを繰り出した。
それをボディに食らった僕は前屈みによろめいた。

三上君はすかさず、僕の頭を押さえ、下からの膝を叩き込んでくる。
僕は手でガードしたが、ガードした手もろとも、顔面に当たった。
さらに、膝と同時に上からは肘が振り下ろされる。
後頭部に肘が入った。こちらは無防備だ。

上から肘、下から膝の素晴らしいコンビネーションを数発食らった僕は、そのまま膝から崩れ落ちた。

K.O.

突進からその間、3秒もなかったろう。
そして、僕がへたり込んだところは水溜りだった。膝が冷たい。
まるで、作られたシナリオの様な場所に、僕はひざまずいていたのだ。

その後、どこがどうなったのか分からないが、僕は三上君と一緒に帰り道を歩いていた。
ケンカを目撃していた金沢君も一緒だった。
彼が取り持ってくれたのだろうか?

「いや〜、久しぶりに怒ったよ〜」
三上君はもう怒ってなかった。晴れ晴れとした表情だ。
僕も怒ってなかったが、口の中を切ったのと後頭部への打撃、そしてビショビショになったズボンのせいで参っていた。
三上君は本気で殴っては来なかったと思うが、まぁ僕の完敗だ。

翌日、学校に行き、三上君としゃべった。
三上君の席は僕の二つ隣の席だ。
間の席の井上さんが驚いた様に言った。
「えっ?ケンカしたの?」
「うん。一瞬で僕が負けたけど。ね、三上さん」
僕は三上君に相槌を求める。
「そうそう。あんなに怒ったの久しぶりだよ」

それを聞いた井上さんは言った。
「カ〜ッコい〜ィ」

カッコいい?
何だかよく分からないが、中3女子から見ると、そういう男のケンカがカッコよく感じたのだろう。
カッコいいとまで言われちゃ、水溜りにひざまずいた甲斐があったてもんだ。
少し照れくさかった。

今となっては、三上君はこの出来事を覚えていない。
ニックネーム SNJ at 23:36| Comment(0) | Sporting Chance
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