昔、友人のマナブ君の会社が倒産して次の職を探している時、僕も無職みたいなもんだった。
平日の昼間、真夏の猛暑の中、僕とマナブ君で一緒にテニスをしようという事になり、千葉県の北端の野田市へと足を運んだ。
「ここは穴場なんだ」
マナブ君が言う通り、野田市のどこかに人気のないテニスコートがひっそりと佇んでいた。
コートが2面。
周りを3m以上の高さのフェンスに囲まれ、その周りは森になっている。
森の向こうには何があるのだろう?
それほど、そこは異空間に思えた。
管理人がいる訳でもないので、僕らは勝手に入ってテニスを始めた。
マナブ君は中学時代はテニス部、僕は卓球部だった。負けてる。
マナブ君は安物のラケットを持参、僕は2万3千円のラケット持参だ。勝ってる。
真夏。
夏の日差しが僕らの肌を突き刺す中、僕は思い切って打つ。
真夏の太陽に向かって、ボールは飛んでいく。
そしてフェンスを越え、真夏で生い茂った草むらの中に消えた。
フェンスの扉を開けて取りに行こうとしたが、鍵が掛かっていて開かない。
フェンスを乗り越えるしかないが、3m以上の高さだ。
しかし、身軽なマナブ君は軽々と乗り越え、草むらへと入って行った。
僕も乗り越えようとしたが、靴がフェンスの隙間に入らず、足場がなくて登れなかった。
マナブ君がボールを拾って戻ってきた。
マナブ君が軽めのサーブを打つ。
僕の2万3千円が唸りを上げる。
ボールは真夏の太陽に吸い込まれ、フェンスの向こうに消えた。
僕はフェンスを登れない。
マナブ君がボールを拾って戻ってきた。
真夏。
それは過酷な環境だ。
僕らは照りつける強烈な日差しに、体を焦がされ、溶かされてゆく。
僕は元々体力がないし、体力自慢のマナブ君も球拾いのせいもあって疲弊している。
せっかく穴場を見付けたのに、30分もしない内にバテバテだ。
ここが穴場である訳が分かった気がした。
横のコートに女性の二人組みがやってきた。
女性の目を気にしてか、マナブ君のサーブスピードが上がった。
僕は一歩も動けない。さすがは元テニス部だ。
僕はどうも、早い球が来るとフォアで打つのかバックで打つのか決め兼ねて動けないようだ。いや、暑すぎて動けないのかもしれない。
それにしても暑い日だ。
女性達は元気にテニスをしている。
マナブ君はフェンスの向こうでボールを捜している。
僕は空を見上げる。
(ここは良い空間だ)
「そろそろ帰ろうか…。もう喉が渇いて限界だ」
凄まじい太陽の攻撃になぶられ、1時間ほどで切り上げて、僕らは車に乗り込んで帰路についた。
いや、帰路より何より、まずは自販機探しだ。
僕らは乾いている。テニスコートには水道の設備はなかったのだ。
こういう時に限って自販機がない。
自販機を求めて走り回った挙句、たまたま見付けた商店で飲み物を買った。
この日、この時ほど、僕は喉が渇いた事はなかったろう。
だが、失業中で腐ってる中、気分転換も出来たし、良い一日だったと言える。
2006年03月14日
Sporting Chance19 失業・失意の真夏のテニス
ニックネーム SNJ at 03:02| Comment(0)
| Sporting Chance
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