無職の我ら二人は、前日のテニスに懲りずに、次の日も遊びに出掛けた。
平日の昼間、近所の手賀沼へと繰り出し、今度はキャッチボールだ。
20代前半の若い二人だ。猛暑と言えども、じっとしてられない。でも無職。
夏、眩しくて真っ盛り。
二人、貧しくて真っ暗闇。
手賀沼に着くと、早速キャッチボールを始めた。
グローブを持ってなかったので、ゴムボールでのキャッチボールだ。
ゴムボールは下回転を掛けると、球が良く伸びる。
スピードのある球だと、浮き上がってくるように見える。
互いに渾身の力を出して投げ合った。
僕は疲れてきたのでカーブを投げた。
すっぽ抜けて高く上がり、マナブ君の右後方に飛んでいってしまった。
飛んでいったその先に、女子高生が二人、制服姿でベンチに腰掛けてしゃべっていた。
すぐ側の高校の生徒で、夏休みに入ったのだろう。
女子高生らは、転がっていったボールを見て何か話していたが、すぐにマナブ君が走っていってボールを拾った。
またカーブを投げた。
またマナブ君の右後方に転がる。
女子高生二人の内の一人がそのボールを拾おうとしたのだろうか、立ち上がってボールの方へ一歩踏み出した。
そこへマナブ君が走ってきてボールを拾った。
マナブ君が走って戻ってくる後ろで、女子高生が笑い合っていた。
またキャッチボールが再会された。
投げ合っていると、マナブ君の後方の女子高生がこちらを見て何か話し合っているのが見えた。
(もしかしたらボールを拾いたかったのかも?)
またカーブがすっぽ抜けてマナブ君の後ろへ転がった。
女子高生たちが、アンタ行きなさいよ、みたいな感じでお互いを押し合っている。
でもマナブ君が走っていって拾った。
僕は左利きなので、カーブを投げるとマナブ君の右肩から入って左手に落ちていく球筋になる。
そうすると女子高生の方へ飛んでいっても、彼女らからは遠ざかる軌道になる。
(そうか、シュートを投げてみよう)
シュートなら女子高生の方へと転がっていくはずだ。
あえて高めのシュートを投げた。マナブ君から逃げていく球筋だ。
マナブ君を越えて女子高生の方へ転がった。
女子高生たちが、互いに譲って押し合う。
今度はボールが近い。
女子高生の一人が立ち上がって、3歩ほど走った。
そこへ風の様にマナブ君が走ってきて、ボールを拾った。
マナブ君が戻ってくる後方で、やっぱり女子高生たちが笑っていた。
またキャッチボールが再会された。
女子高生たちはいつの間にかにいなくなった。
僕の後方で、男の笑い声が聞こえた。
ちらっと見ると、何が面白いのか分からないがこちらを見て笑っている。
キャッチボールを続ける。
また笑い声が聞こえる。
どうやら、僕が球を投げると笑っているようだった。
「ヤングマンじゃねーのか?」
「ブハハ〜ッ」
何だかよく分からないが、もしかしたら僕が短パンで投げていて、スネ毛が濃いから笑っているのかもしれない。
渾身の力でマナブ君に球を投げる。
よく伸びていく自己満足の球筋だ。
「ワハハハハ!」
また後ろで笑い声が聞こえる。
僕が投げる球が速いほど笑っているようだった。
今思うと、僕の投げるフォームがおかしかったのかもしれない…。
そして、猛暑の中疲れた二人はキャッチボールを終えた。
僕は自販機で飲み物を買いながら、マナブ君に言った。
「さっきマナブの後ろで、女子高生たちがボール拾おうとしてたよ。でもマナブが全部拾っちゃったから笑ってた」
「え?全然気付かなかった」
手賀沼でのキャッチボール。
僕は何人もの友人をここへ連れてきてはキャッチボールをしている。
何故だろう?
きっと、汚い沼ながらもこの近辺で唯一の憩いの水辺だからだろう。
無職二人は、無職なのも忘れてこの水辺で癒され、そして楽しんだのだった。
2006年03月14日
Sporting Chance20 手賀沼でのキャッチボール
ニックネーム SNJ at 14:43| Comment(0)
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