宮城、岩手、秋田に跨って、栗駒山を中心に広がる高原である。
僕らが向かう温泉は、小野君が雑誌で見てその景観に一目惚れした『栗駒山荘』という温泉宿だ。
宿泊も出来るが、今回は温泉の立ち寄りだけである。
延々と続く山道を、パジェロioの持ち主であるRA君が運転していく。
RA君は昨夜は仕事帰りで、車内で2時間ほどしか眠れていない。
天気もどんどん悪くなっていく。霧が立ち込め、やがて雨も降ってくる。
この旅行中、高速道路を含めて何度か雨に降られているが、車から降りている時には雨はやんでいた。
しかし、この天候では温泉の露天風呂もからの眺めも良く見えないかもしれない。
栗駒高原は広いので道を間違えた。ついうっかり宮城県側の道に行ってしまったのだ。
栗駒山荘は秋田県にあるので、今来た道を引き返さねばならない。
しかし引き返そうにも道が狭く、Uターン出来る場所がない。
かなり走ってから、やっとUターンして戻った。
天気は相変わらず悪い。
車の前を、イタチが横切った。
山道は険しい。
悪天候と急カーブで、RA君の体力はどんどん磨り減っていった。
早く温泉に着かないと身が持たない。
山道を上り終えると、高原の中の道が続き、風の中に硫黄の匂いが混じり始め、ようやく温泉宿が見えてきた。
しかし、ここは『須川温泉』といって、岩手県側の温泉だ。
もう少し進んでカーブを曲がるとすぐ、秋田県側の『栗駒山荘』に着いた。
県境を挟んですぐの位置に温泉宿がある。なかなかの温泉所なのだろう。
この時、急に天候が回復し、空は晴れ渡った。この辺は普段から霧も多いのでラッキーと言える。
栗駒山荘に入ると早速、湯に向かった。
風呂場の引き戸を開けると、左に洗い場、右に内湯、そして内湯の向こうに露天風呂があった。
体を洗うと、内湯を無視して露天風呂に向かった。
僕より先に体を洗い終えた小野君とNK君、運転で疲れたRA君がすでに露天に浸かっていた。
彼らの前には、タオルで隠しもしない素っ裸のおじいさんが、風呂の縁に寝そべっていて、視界を遮る。
その向こうの山々の手前に、おじいさん連邦を臨まなくてはならない。
少し、視線を彷徨わせるしかなかった。
やがておじいさんがいなくなると、雑誌の写真通りの素晴らしい眺望が広がる。
僕らは、しばし無言で遠くまで連なる山々を見ていた。

アハハ〜、キャ〜、ワハハ
露天には子供も何人かいて、騒いでいた。
子供たちの父親が「うるさくするならもう出てなさい」と叱ったが、子供たちは「やだ〜」と言って露天に残った。
やはり、子供もこの開放感で浮かれているのだろう。それほどの開けた眺望なのだ。
しばらくすると子供たちはまた騒ぎ出した。
何となしに子供たちの会話を聞いていると、このように話していた。
「いらっしゃ〜い。ミルク温泉にしますか?それともタマゴ温泉にしますか?ツルツル飲み会もありまぁす」
ミルクはお湯の色、タマゴは温泉の匂い、ツルツルは泉質で肌がツルツルになるからだろう。
視覚、嗅覚、触覚で発想したネーミングだ。僕は少し笑ってしまった。
「スベスベマッサージしまぁす」
見ると、子供が湯舟の縁に横たわって、他の子がお湯をかけている。
横たわっているのも幼女なら、お湯をかけているのも幼女だった。
この露天風呂は、いろんな人が写真にとってホームページに載せているので、僕も撮りたかったが、これでは無理だ。
硫黄の匂いと、すっかりのぼせてクラクラになったので、湯から上がって内湯に入ってみた。
露天はぬるめで長く浸かってられたが、内湯は熱くてすぐに出た。
体に染み付いた硫黄の匂いを落とそうと体を洗ったが、シャワーのお湯自体が硫黄の匂いがする。
硫黄臭を身にまとって出るしかなかった。
いつぞや、青森旅行で『酸ヶ湯』に入った帰りを思い出した。
あの時は帰りの車中に硫黄臭が充満し、窓を開けても辛かったのだ。
(今回の残り香はどれほどのもんかな…)
そう思って湯を後にしたが、幸いなことにそれほどひどくはなかった。
僕が風呂を出る頃には子供たちもいなくなり、湯舟はすっかり空いていた。
イケメンの色黒のお兄さんが独り、露天の隅に方膝を立てて腰掛け、山々を眺めている。
チクショー、サマになってるなぁ。
〜続く〜
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写真で見せたかったね。
機会があれば行ってみておくれ。
同級生とこんな旅行が出来るなんて本当に羨ましいわ。仲間っていいね☆
みんな寝てないから、クラクラだったかも…。
でも、今までで最高峰の露天風呂でした。