上り始めて進んだ距離は1kmもないだろう。

上ってすぐのとこからの三島市街の眺望だ。
下を通る線路は東海道本線。
眺望と言うほど、標高は高くない。
昨日の疲れもあったのだろう、この先の上りで僕は力尽きた。
トラックを避けて歩道を進んだのだが、この歩道が敷石でデコボコして走りにくいのだ。
タイヤの回転エネルギーが段差で食われて、ペダルを回すのに余計な力を使う。
息も絶え絶えなら、脚も途絶えた。
三島から箱根までは約15km。
平地なら1時間も掛からない距離だ。
だが、15kmで800m上る。
上る前は、僕は2時間で上り切る気でいた。
なのに10分ほどで息絶えた僕は、途方に暮れながら徒歩で自転車を押していた。
後ろを見れば、三島市街がすぐそこにある。
全っ然、進んでない。
新興住宅地を過ぎると、後ろを振り返っても三島の市街地は見えなくなっていた。
勾配もキツくなり、ますます自転車に乗れなくなってくる。
そして畑が増えて、肥料の匂いが漂ってくる。
風は穏やかだ。
化学肥料ではない肥料の匂いが立ち込める。
僕は、とっとと通過してしまいたいのだが、脚が動かない。
息を止めつつ歩く。
苦しくなって大きく息をする。
肥料の香りで、むせかえる。
ますます苦しくなる。
早く通り過ぎたい。
小走りになる。
呼吸回数が増える。
苦しい。
呼吸を浅くする。
苦しい。
吸い込めば匂う。
苦しい。
ああ、何をどうやっても苦しいのだ!
苦しいものは苦しい。
僕はただ静かに歩いていくしかなかった。
〜続く〜
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