「はいっ、頑張ります!」
僕は励まされながら自転車で山を登っていた。
「すご〜い!若いわねぇ〜」
「もうへろへろですけどね」
「あらまぁ!自転車で!?」
「ええ、なんとか上まで行こうと思います」
次々に励ましと驚嘆の声を受ける。
かつて僕がこんなに声援を受けたり、褒められたりした事があろうか?
いや、無い!
〜自転車奇行・宝登山編〜
泊まりの仕事がすっかり長引いてしまって僕は少し疲れていた。
(もう疲れたな…。こりゃ仕事が終わったら自転車で走るしかないな…)
矛盾しているようだが、精神的に疲れた場合、敢えて体を動かした方が疲れが取れるのだ。
6日間仕事でほとんど外に出なかったので体重は増え、体はナマっていた。しかも眠い。
しかし、仕事場で3時間仮眠して、何とか朝の7時半に起床。
顔を洗ってコンタクトレンズで武装すると、自転車で池袋駅に向かった。
途中で朝食を摂って、池袋駅に到着。
自転車を折り畳んで切符を買い、9時30分発の西武鉄道の特急レッドアロー号に乗り込んだ。
今回の目的地は、先週行こうと思った『宝登山(ほどさん)』である。
今の時期、宝登山ではロウバイという梅の一種が花を咲かせているのだ。
特急レッドアローは都内を抜け、所沢を過ぎる。
入間市辺りまで来れば、秩父方面の山々がハッキリと見えてくる。
去年の年末に走った奥武蔵グリーンラインは、その山々の尾根道だ。
山が見えてくると、何だか興奮してくる。
そして飯能駅を過ぎると、風景は山の中になる。
電車内から自分が走った山が見えないかと思ったが、線路が山に近過ぎて山の上は見えなかった。
線路の傾斜が上りから下りになると、西武秩父駅は目前だ。
秩父は僕の田舎だったので、子供の時に何度も訪れている。
子供の時に眺めてたはずのレッドアローから見える風景のほとんどは覚えていなかったが、レッドアローが大きくカーブを描いて西武秩父駅に入っていく様は覚えている。
列車がカーブを描くと自分の乗ってる列車の側面が窓から見えるので、それでよく覚えていたのだ。
午前10時50分、西武秩父駅着。
さっそくお土産を購入する。これが自転車を漕ぐ上で重りとなることは明白だ。
「秩父のシンボル的な武甲山がすぐそこに聳える。
三角形の頂と、セメント採取のためにかなり削られてしまった山肌が特徴の山だ。
さて、去年末にここに来た時は夜で何も観れなかったので、まずは秩父市内を走ってみよう。
〜続く〜
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