動悸は激しく、頭はクラクラして目が回り、手足は震えて吐き気を催してきた。
やはり睡眠不足がたたってきた。
どうにもならなくなって自転車を押しながら登っていると、またおばちゃん軍団が下ってきた。
僕を見て、
「あら、自転車。こんなとこ登れるのかしら?」
「登れるわよ、富士山とか登る人もいるんだから」
「あ〜ら、たいへんね〜」
などと、話しているのが聞こえる。
僕はもう、死にそうな顔をして俯いたままだ。
俯いた顔から汗がポタポタと落ちる。
さぞかし、気持ち悪い風体だったろう。出来れば、爽やかに登っていきたいもんだ。
少し登るとイスのある休憩所があったので、そこで座って休んだ。
寒風が汗を冷やすが、それが心地良い。
すぐに寒くなるが、体が動かない。
僕は、登山道を甘く考えていたようだ。
登山道は、舗装路より短い距離で標高を稼ぐのだ。勾配はその分キツい。
遠くの山々が見える。
向こうに見える山を平行に見ると、自分のいる標高の見当が付く。けっこう登ってきているのが分かる。
あと少し。
しかし、体がもう動かない。登る前にうどんを食べてきたのに、力が湧いてこない。
(参ったなぁ…)
僕の後から登ってきたおばちゃん軍団が、僕を抜いて登っていった。
この時点で僕はつまり、徒歩より遅く登っているという事になる。
砂利道の登山道はつづら折れになっており、ところどころ直線的に木の根の階段でショートカットできるので、おばちゃん達はそこを登ってきたのかもしれないが…。
(このままここにいても、寒くなって風邪をひくだけだな〜)
また夫婦の下山者がやってきて、少し話す。
「あら、自転車で行くの?」
「ええ、もう疲れきってしまいましたが…。あと少しで頂上ですかね?」
「う〜ん。もうちょっとあるね。でも、10分くらい登れば終わりかな。もう少しだから頑張って」
「はい…ありがとうございま〜す」
夫婦が過ぎると、僕は立ち眩みながら立ち上がった。
立ち眩みが治まると、また自転車に乗って漕ぎ出した。
少し漕いではまた降りるの繰り返しで、どうにか山頂方面と動物園への分岐に辿り着いた。
宝登山には、小動物園が設けられていて、ウサギや猿や鹿などがいる。
僕は休憩がてら動物園に立ち寄った。
動物園前には車が停まっていたので、僕が通ってきた登山道は車もギリギリ通れるようだ。

ウサギにエサをあげる。
ウサギは立ち上がって僕の手からニンジンを食んでいく。
なかなか可愛くて疲れを忘れる。
ウサギの後は、タヌキやヤギなどを見ながら猿山の方へ下りていく。
動物園は山の斜面にあるので、見晴らしが良い。
猿山では、猿がケンカをしていた。
ケンカの行く末も気になったが、そろそろまた自転車に戻ろう。
頂上までは、もうすぐだ。
〜続く〜
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