ぬかるんだ路面を自転車を押して登っていく。
そのまま、宝登山神社奥宮を右上に見つつ進むと、ロープウェイの山頂駅やレストハウスが見えてくる。

ロープウェイ乗り場とロウバイ園への分岐を右に登っていく。
ここも急だが、向こうが開けている。
そこにロウバイが広がっているに違いない。
僕は高揚して疲れも吹っ飛び、自転車で登っていった。
すると嗅いだことのない甘い香りが漂ってきた。
(この匂いは?これがロウバイ?)
しかし、枯れたような木ばかりで花はどこに咲いているのか分からない。
…と思ったら…、

一面がロウバイ!
枯れ木と思っていたのは、黄色い花のせいだった。
(お〜!おお〜!)
初めて見る光景に驚く。写真では見たことあるけど…。

周りはロウバイを観に来た人で溢れてる。
みんなカメラを手にしている。
その中を僕は、申し訳なさそうに自転車を押して通ってゆく。

僕も自転車を停めてロウバイを撮った。
空と森とロウバイのコントラストが鮮やかだ。
「あれ、自転車があるわ」
「あれで登ってきたんじゃない?」
壮年の夫婦が僕の自転車を見て話していたので、話し掛けた。
「そうです、これで登ってきました」
「へ〜、すごいね〜。どこから来たの?」
「麓から来ました」
僕は、登って来た達成感でそう答えてしまったが、向こうの質問の意図は、「僕がどこに住んでいて、どこから走ってきたのか?」という事だったに違いない。
あまりにも間抜けな答えだ…。
その後も、いろんな人に話し掛けられた。
自転車と一緒でなければ、こちらからも向こうからも話す事はなかったろう。
花を観るのに邪魔ではあるが、ここまで自転車で来た甲斐があったというものだ。

ロウバイと武甲山の構図。
秩父市内からは大きく近くに見えていた武甲山だが、宝登山からは遠い。
しかし、遠くにあってこの存在感。さすが武甲山。

ロウバイ園の裏手には麓の宝登山神社の奥宮がある。
日本武尊を助けた犬が狛犬となって鎮座する。
おみくじを引いたら中吉だった。
ついでに山頂で記念撮影。
若いカップルが互いを撮り合っていたので、僕が二人一緒のを撮ってあげる。
換わりに僕も撮ってもらおうとカップルにカメラを渡した途端、おばちゃんが横から「私を撮って〜」と割り込んできた。
おばちゃんからカメラを受け取って撮ってあげようとすると、
「お〜い、早くぅ、こっちこっち〜」
仲間のおばちゃんも向こうからやってきた。
なので、おばちゃん二人を撮ってあげる。
先ほどのカップルが、僕のカメラを持ったまま横で待っていてくれたので撮ってもらおうとすると、
「換わりに撮るわよ〜」
僕のカメラはおばちゃんの手に渡った。
待っていてくれたカップルに礼を言って、自転車と共に指標の前に立ち、おばちゃんにシャッターを押してもらう。

『宝登山 497.1M』
後で見ると、おばちゃんの指がレンズに掛かって写り込んでいた。
〜続く〜
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