左にカーブして、日本原子力研究所の横の下り坂に差し掛かった時だ。

海が見えた。
フェリーの、さんふらわぁ号が見えた。
「海だ!ハセガワさん、海ですよ〜!」
僕らは右手に鹿島灘を臨みながら、長い下り坂を駆け下りていった。
左手には原子力研究所の鉄条網が、ずっと続いている。
海が見えて爽快だが、歩道と車道の間に縁石がないので危険な道だ。
すぐ横を猛スピードでトラックやらトレーラーなどの大型車が通過していく。
車が途絶えた隙を見計らって、気分を良くした僕は一気に加速した。
思いっ切り漕いだら自転車がグラグラとブレて危険だったが、49.6kmまで加速できた。
後ろを見ると、キューピーさんはまだ遥か後方にいた。
下りでスピードは出るが、お尻が痛いのだ。
坂を下ると、海岸方面へ右折。
砂浜が広がっている。
さんふらわぁ号も、遠くに見える港に入港中だ。

砂浜へ向けて坂を下りていくキューピーさん。
ここまで20km以上走って、最も気分の良い瞬間だろう。
そのまま砂浜に自転車で乗り込む。
「うわぁ!走れない!」
砂にタイヤを取られて、思うように走れない。
初めての砂浜走行にビックリだ。
「軽いギアにすれば、なんとか進めますよ」
キューピーさんは、意外に乗れている。
僕の自転車の後輪は、砂に沈んだり、横に滑ったり暴れている。
二人で砂浜にタイヤのシュプールを描きながら海辺へ向かう。
波打ち際はすぐそこに見えているのに、いくら走っても辿り着かない。
漕いでる割に進んでいないのと、砂浜と海で遠近感が狂っているのだろう。
太平洋は雄大だ。
やっと波打ち際に着いた。
しかし、キューピーさんはそのまま進んでいく。
「あれ?海に入っちゃうんですか?」
「いえ、入りませんよ〜」
キューピーさんは波が来ると、ギリギリのところで止まった。
しかし次の波が大きく、急いでUターンして逃げる。
僕もマネして、波ギリギリで写真を撮ってもらおうとした。
砂浜には自転車のスタンドが沈んでしまって停められなかったが、キューピーさんが貝を見付けて『貝殻ストッッパー』という技で停車に成功。
「撮りますよ〜。あ、波きてます!」
キューピーさんが警告したが、僕の自転車はタイヤの3分の1ほど水没した。

砂浜走行は楽しかった。
大洗の海岸だったが、波に飲まれてタイヤは大汚れ。
チェーンにも砂が付き、ブレーキも利きにくくなった。
洗い場を探したが、水道はなかった。途中でペットボトルの水で洗おう。
家に帰ったら、大洗いだ。
「あ、ああ〜」
キューピーさんのズボンの裾からタオルが出てきた。
クッション代わりにサドルとの間に敷いていたが、それだと腰を浮かせた時に落ちてしまうので、ズボンに入れてたのだ。
それが、砂浜のデコボコなどでズリ落ちてきたのだろう。
僕は一瞬、パンツが脱げたのかと思った…。
さて、無事に海まで来ることが出来た。
鹿島鉄道、海と来て、この旅の目的は残すところあと一つ。
水戸の偕楽園。
そこが最後の目的地だ。
僕らは大洗の海岸を後にし、水戸方面へと進んでいった。
〜続く〜
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