そこを10分で走りきる。
特急の発車時刻は、16:52。
今が16:15くらいなので、10分で行けば16:35までには水戸駅で切符を買い終わっているはずだ。
そこから自転車を折り畳んでホームへ向かう時間が15分ある計算だ。
何とかいける。
「僕が先に走っていって特急券を買っておきます!」
僕が先行して切符を買えば、あとは自転車を畳む時間だけを考えれば良い。
キューピーさんも脚とお尻が限界なので、飛ばして走るのは難しい。
「あ、そうだ。水戸駅ですが、北口から回っていくと水戸黄門の像があるので北口に向かいましょう」
僕は変な提案をした。
水戸駅から偕楽園に来た時は、南口から川沿いに来たのだが、北口に向かえば走る距離も短くなる。
この判断が後に響いてくるとは、僕は知る由もない。
「それではお先に!」
僕はキューピーさんを残して走り去った。
キューピーさんは地図を持っていないが、道は線路沿いに行けば良い。
僕は線路に沿って時速30km以上で走っていった。
小道に差し掛かったが、そのまま進んでいった。
道はマンションの駐車場に続いていたが、その先に抜けられると思って駐車場の奥まで入っていく。
しかし、そこは行き止まりだった。
抜け道や、歩いて通れる通路を探したが、無い。
丘の上に、マンションが駐車場を囲むように建っているだけだ。
急いで戻る。
向こうからキューピーさんがやってくる。
僕は、手をクロスさせてバツ印を示して戻っていった。
「行き止まりで〜す!」
「ええっ?」
行き止まりで3分のロスだ。
もう南口に回る時間はない。
マンションの建つ丘を越えるしかない。
僕はマンションの裏手に続く坂道を上り始めた。
「先に行ってます!」
だが、この坂は今日一番の激坂だった。
こんな坂があったとは、地図では分からない。
汗を垂らしながら上る。
もう自転車を降りて歩いている時間はない。
僕が先にいって切符を買わなくては、この計算も合わなくなってくるのだ。
途中で坂がカーブしているので、キューピーさんは見えなくなった。
僕はそのまま上っていく。
上り切って真っ直ぐ行くと、今度は先が見えないほど急な下り坂だ。
一気に駆け下りる。
そして高架線の道路をくぐって、再び線路沿いに出る。
あとは真っ直ぐ行けば水戸駅だ。
(うおお〜ッ!!)
僕は全ての力を振り絞って漕いだ。
水戸駅が見えてきた。
坂道が大誤算だったが、確かに距離は短かったようだ。
時刻は16:26。
階段下に自転車を停めると、急いで階段を駆け登り、みどりの窓口へ飛び込んだ。
混んでいた!
特急券売り場には、行列が出来ている。
(マズいな。もし満席になったらアウトだ)
それに、切符を買えてもキューピーさんが水戸駅に辿り着けなければ、特急に乗ることは出来ないのだ。
キューピーさんに地図を渡しておけば良かったと悔いる。
待っている間に一応、キューピーさんに道順などのメールを打った。
僕は、焦りと自転車を飛ばして走ってきたせいで、大汗をかいていた。
呼吸も荒い。
周りから見ればけっこう怪しいが、そんな事を気にする余裕はない。
やっと僕が切符を買う順番がきた。
無事に二人並びの席を購入。
時刻は、16:36。
水戸駅構内を走りながら、キューピーさんに電話を掛ける。
キューピーさんはすぐに電話に出た。
すでに4番バス停に着いているとのこと。
(よしっ、いける!)
階段を下りてキューピーさんと合流。
キューピーさんは、僕とは違うルートで水戸駅に着いたらしい。
途中の坂があまりにも急坂だったので、迂回路を見付けて走ってきたようだ。
「一気に畳みましょう!」
キューピさんに工具を渡し、まずは自分の自転車を折り畳む。
僕のが終わってキューピーさんを見ると、ほぼ折り畳み終わっていた。
「あれ?ずいぶん早くなりましたね」
「少し慣れましたかねェ」
なんと5分も掛からずに折り畳み終えた。
時刻は、16:42。
特急の発車まで残り10分ある。これなら余裕だ。
自転車を入れた袋を担ぐと、階段を上って改札へ向かう。
「あ、そうだ。急いでて、水戸黄門の像を見てなかった」
黄門像を探すとすぐに見付かったが、像の前まで歩いていく時間はない。
時刻は16:46。発車まで、あと6分。

3倍ズームで遠くから撮影。
「撮りました。行きましょう」
そうして僕らは、16:50にはホームに立っていた。
一時はどうなることかと思ったが、間に合って良かった。
僕は、土浦駅で飲み損なったアイスココアを飲んでやった。

16:52、フレッシュひたちが到着。
初めて乗る特急だ。
僕もキューピーさんも電車好きなので、特急券は高いが嬉しくなる。
しかし、フレッシュひたちに乗り込むと、僕の席におじさんが座っていた。
(あれ?もしかして、座席間違えたかな?いや、もしや特急の時間間違いか!?)
一瞬少し焦ったが、おじさんに声を掛けると、「ああ、すいません」とおじさんは別の車両に移っていった。
単に、自由席だけど指定席に乗ってただけだった。
(全く、ヒヤヒヤさせやがるぜ…)
座席に着き、特急が発車する。
水戸を出てしばらくすると、昼に鹿島鉄道に乗った石岡駅に着いた。はるばる一周してきた感じだ。
右手には筑波山が見えている。
景色も良い。
また旅情に浸る。
やがてキューピーさんは寝息を立て始めた。
さぞかし疲れたことだろう。
僕の無謀な計画に付き合わせて、スミマセンてとこだ。
特急は速かった。
土浦、牛久、我孫子と、どんどん過ぎる。
キューピーさんが起きた。
「あれ、もう柏ですか?」
水戸から柏までは1時間ほどだが、我孫子から柏までは2分くらいで着いてしまった。速い。
柏で乗り換えて、18:09、出発地点の馬橋駅に戻る。
何とか制限時間内に戻ってこれた。
「今日の走行距離は、42kmでしたよ」
「すいぶん走りましたねェ」
僕が最初に計画していた距離の倍近く走ってしまった。
距離も大違いなら、時間もギリギリという、コンダクターとしては最低なヤツである。
「お疲れ様でした〜」
キューピーさんと別れると、僕はまた自宅へと向かって自転車を漕いだ。
(鹿島鉄道も良かったし、海も良かったし、偕楽園も良かったし、特急も良かったなぁ)
食べ物はほとんど食べれなかったけど、それ以外は満喫できた。
計画倒れに終わらなくて本当に良かったと思う。
キューピーさん、ありがとうございました!
桜はまだ咲いてなかったけど、春はそこに芽吹いていた。
ただ、鹿島鉄道に二度と春が来ないのが残念だった。
〜鹿島鉄道編・完〜
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ちょっとドキドキ感のある日記でした。また思い出が増えたね。キューピーさんとともにね。
ついに自転車の旅も複数名になったね。
またしばらくは自転車の一人旅が続きます。
でも、そろそろ車旅行かな。