バスの切符売り場で、自転車を運ぶ交通手段がないか訊いてみた。
「バスで運べると思いますよ」
「さっき断られたんですよ。混んでたからかもしれないけど」
「混んでると断られるかもしれませんね。運転手さんによるんじゃないですかね」
「そうですか。では、次のバスでもう一度トライしてみます」
次のバスは15分後だった。
バス停には、すでに10人ほど並んでいる。
今は空いてるが、次の電車が到着してしまうと、客が降りてきてバス停がまた混んでしまう。
(電車来るな。電車来るな〜)
バスが来た。
客は僕らの後ろには並んでない。
これなら持ち込めそうだ。
作戦として、無言で自転車をバスに持ち込むという手段に出た。
何か言われたら諦めるつもりだったが、狭い通路に引っ掛かりながらも無事に持ち込む事が出来た。
これで、いろは坂の上まで楽に行ける。
東照宮の前を通り過ぎる。
日光まで来たが、今日は素通りだ。
いろは坂は、シートの間に置いてある自転車が傾くくらい、急カーブだった。
バスは、次々に乗用車に抜かれながらも、ゆっくりと標高を上げていく。
10人ちょっとしか乗ってないのに、車体が重そうだ。満員だったら、もっと遅いのかもしれない。
日光駅周辺が標高550mないくらいだったが、やがて1200mを越えた。
自転車で登っていたら、とんでもない事になっていたろう。
そして、中善寺温泉に到着。
我々は、さらに先の竜頭の滝まで乗っていく。
中禅寺湖を左手に眺めながら、バスは奥日光へと進んでいく。
時は6月1日。車道沿いの木々は新緑、キレイな黄緑色だ。
車内のおばちゃん達が話していた。
「あら〜、新緑がキレイね〜」
「ホントだわ。汚ねぇ色になる前に観れて良かったわぁ」
おばちゃんの『汚ねぇ色』という表現に、笑いそうになった。
午前11時、竜頭の滝に到着。
自転車を組み立てて出発。
…と思ったら、キューピーさんの自転車の鍵がない。
折り畳んで運んでいる間に失くしたようだ。
僕の自転車とキューピーさんの自転車のタイヤ同士を、チェーン錠で繋いで停めてから滝を観に行った。

竜頭の滝の水量は多かった。
「うわぁ、流されそ〜」

滝の横の茶屋で、滝を見ながら食を摂る。
キューピーさんはうどん、僕は雑煮にした。
雑煮の餅は揚げ餅で、香ばしくて美味しかった。
僕は、朝にも揚げ煎餅を食べてきたので、揚げ物ばかり食べている。

竜頭の滝は、長い距離を緩やかに流れ落ちていく滝だ。
場所によって、異なる表情を見せる。
一気に落ちる滝とは違う趣きがある。

滝の上まで登っていくと、眺めはさらにダイナミックになる。
緩やかな角度で流れているが、流れは激しい。

滝のほとりに座ってみる。
流されたら、一気に段差を滑り落ちていきそうだ。

そろそろ戻ろうと振り返ると、滝の向こうに中禅寺湖が見えた。
あそこまで流れているのだろうが、滝と湖、素晴らしい景観だ。
小学6年の時もここに来たのだが、こんな眺めにときめいた覚えはない。
確か旅行中に熱を出して、頭が痛くてずっと俯いて歩いていた記憶がある。

その時と違って、今は清々しい気分でここにいる。
QP「ここの滝、かなり良いですねェ」
僕「そうですね〜、こんなに良い滝だとは…。侮ってましたよ。ここまで来て良かったですね」
さて、次なる目的地は華厳の滝だ。
我々は自転車に跨ると、中禅寺湖に沿って華厳の滝へと向かった。
〜続く〜
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