我々は、下り専用の第一いろは坂を自転車で下りだした。
「はぐれても先に行ってていいですよ」
僕は写真を撮りながらいくので、キューピーさんにそう伝えてから下りていった。
4月に山道を下った時、デジカメ動画で下りの風景を撮りながら走ったので、今回もまたデジカメを片手に走り出す。
さすが、いろは坂。見る見る内に加速していく。
右手にデジカメを持ってると、前輪ブレーキを思いっきり掛けられないので、スピードが出過ぎたと思ったら右手をハンドルに押し付けて、薬指でブレーキを掛ける事にした。
画像はブレブレになるが、仕方ない。
いくつかのコーナーを抜けると、急コーナー途中でキューピーさんが待っていた。
QP「スピード出ちゃいますねェ」
僕「コーナーがすごい角度ですよ。十分に減速しないと危険ですね」
ふと、デジカメを見ると、動画が撮れてなかった。
録画ボタンを押し損なってたようだ。
撮れてないのに、片手でデジカメを構えて走っていた。

改めて録画しながら下りだす。
一気に40kmくらいまで加速し、キューピーさんは前方に遠のいていく。
いろは坂は道路の状態がヒビ割れててあまり良くないが、道は広いので好きなラインで走っていける。
第一いろは坂には、28個の急カーブがある。
緩やかなカーブもあるので、コーナー数はもっと多い。
急カーブは200度くらい曲がるヘアピンカーブばかりで、減速しなければ曲がれない。
だが、急カーブで減速するのは当たり前なので、まだいい。
問題は、急カーブの繋ぎにある緩やかなカーブだ。
車だと道に沿って曲がっていくので減速するが、自転車では2つのコーナーの真ん中のラインを狙えば、真っ直ぐ抜けていける。
ここでは対抗車は来ないので、道幅いっぱい使える。
これで4つのコーナーを真っ直ぐ走った場合、どんどんスピードが速くなってしまうのだ。
何だか速いな〜と思って速度計を見ると、時速50kmを超えていた。
目の前に急なコーナーが迫る。
片手にはデジカメ。
(マズい!)
後輪ブレーキを強めに掛けたが、スカーッと音がして減速しきれない。
デジカメ動画を無視して右手も前ブレーキを掛けた。
ガードレールが迫る。
(曲がれ〜ッ!)
ガードレールぎりぎりで曲がれた。
急カーブではなくても危険だ。
これ以降は、さらに早めな減速を心掛ける。
ガードレールにぶつかりそうになったショックか、しばらくデジカメ動画がブレまくりだった。
コーナーの曲がり方も下手になっている。動揺が激しい。
動画を撮りながら走っていくと、キューピーさんに追い付いた。
後ろから2台の車が来たので先に行かす。
僕「さっき、50km出てましたよ〜」
QP「ええ?」
僕「52kmまで出ましたよ〜!」
QP「ええ?」
会話しながら下りていくが、風の音でほとんど聞こえない。
キューピーさんと抜きつ抜かれつしながら、次々にコーナーをクリアしていく。
もう半分以上は下ってしまっただろう。

コーナーにも慣れて、コーナリングがスムーズになってくると、さっき前に行かせた車に追い付いた。
前の車はミキサー車だったので、車体が重くてコーナリングスピードが遅いのだろう。
車に付いて走っていくと、やがて急カーブがなくなった。
いろは坂の終わりも近い。
短いトンネルがあって、トンネルに入った車が下方向に消えた。
トンネルはかなりの急勾配のようだ。
我々もトンネルに入る。
一切漕がずに急加速する。
メーターを見ると、時速59km。
(何じゃ、コラァ!?)
今まで記録した最高速が57.5kmだった。
しかもそれは、26インチのマウンテンバイクで記録したものだ。
今、乗っているのは20インチの折り畳み。
目を疑うスピードだ。
トンネルを抜けると、左コーナー。
前を行く車のテールランプが赤く点灯する。
僕も減速する。
僕の横に、後ろを走っていたキューピーさんが並んだ。
僕「ヤバい角度でしたよ、トンネル」
ゴォォォォォ!
話し掛けるも、風の音で聞こえない。
左コーナーの向こうに橋が見える。
橋の継ぎ目の段差が怖い。
僕は片手にデジカメを持っているのだ。
ガタタン!
橋の継ぎ目を乗り越え、橋を渡る。
橋の向こうは右コーナー。
僕「凄いスピード出てましたよ。片手ハンドルじゃなければ、もっと出たんですけど」
ゴォォォォォォ!
話し掛けるも、やっぱり風の音で聞こえない。
この辺は、左手に屏風岩というのが見えるが、我々は下るのに集中していて、一切そんな存在に気付かない。
デジカメには風景もちゃんと撮れていた。
急勾配の右コーナーで加速しながら、次の橋へ。
さっきの橋より継ぎ目の段差がある。
ガタタタン!!
かなり怖かったが、無事に段差を乗り越えた。
メーターを見ると、60kmを超えている。
この辺は『馬返』という地名だ。
馬が上れないくらいの急勾配という意味合いだったのだろう。
ここでデジカメの動画は途切れていた。
一度に撮れる録画時間限界の400秒を超えてしまっていたのだ。
僕はそうとも知らずに、デジカメを構えて走っている。
橋を渡り終える時も、継ぎ目の段差がある。
無事に乗り越えてメーターを見ると、時速62.9km。
僕はデジカメ動画でメーターを撮った。
でも、録画時間を過ぎているので撮れてない。
勾配が緩やかになって、第二いろは坂との分岐に戻ってきた。
これで、いろは坂は終了だ。12分くらいで下り切ってしまった。
僕は合計9分もデジカメ動画を撮っていた。
長い坂だった。
そういや、猿は見かけなかったな。
一旦、自転車を停めて休憩。
僕は手袋をしてなかったので、手がかじかんでいる。
半袖だったが、緊張で寒さはあまり感じなかった。
僕が、最高速62.9kmを記録したが、キューピーさんも62.5kmを記録していた。
キューピーさんは初めてのダウンヒルだったのに、こんなに出てしまった。
二人とも、漕いでないのに。
QP「50kmくらいになると、漕いでも空回りして無駄ですねェ」
どんだけ急勾配なんだ、いろは坂は…。
〜続く〜
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