途中のパーキングで、僕からキューピーさんに運転を交代した。
僕もキューピーさんも旅行前日は興奮して眠れないタイプなので、朝4時起きだったしお互い3時間も寝てない状態だ。

予報は雨だが、晴れ間は見えている。
このまま降らなければ良いのだが。
キューピーさんがいつも運転しているのは軽自動車なので、僕の家の車を運転するのは怖いらしい。
車幅が30cmくらい違うのだ。
なので高速道路を担当してもらうことにした。
沼津インターで無事に高速を降りて、下田街道を修善寺へ向かう。
街中に入ったので、また僕に運転を交代した。
修善寺が近付いてきて下田街道から修善寺方面へ道を外れると、途端に道幅が狭くなる。
「雰囲気あるな〜」
修善寺は温泉街で、情緒溢れる道沿いに多くの商店が並んでいる。
対向車と擦れ違うのも一苦労の道を抜け、駐車場に停める。
午前9時半、修善寺到着だ。

弘法大師の開基で、1200年の歴史を誇る修禅寺。
温泉としての地名は修善寺だが、お寺の方は修禅寺と書く。
源頼朝の弟の範頼、頼朝の子の頼家が幽閉されて暗殺され、岡本綺堂『修禅寺物語』の舞台としても有名だ。
頼家は23歳の時、入浴中に暗殺されている。
しかし、入浴中はまずいだろう。
丸腰どころか、丸出しなのだ。自前の大刀で勝負といっても……いや、下ネタはやめとこう。
境内には手水があった。
「きゃっ!」
手を清めようとしたタカちんとトモっちが声を上げた。
「どったの?」
近付いてみると、なんと手水がお湯だ!
水だと思って触ったら熱かったのでビックリしたようだ。
さすが温泉地。抜かりない。

本堂の中を覗くと、かなりキレイだ。
去年まで改修工事をしていたらしい。

キューピーさんに階段の上から賽銭を投げ入れてもらった。
賽銭は賽銭箱に当たってはね返って地面に落ちた。
初詣などの混雑時はみんな投げ入れているが、逆側から投げ入れるのは罰が当たりそうだ。
地面に落ちたお金を拾って、賽銭箱に入れた。
お金はキューピーさんの。入れたのは僕。

石仏と同化するキューピーさん。

竹林をバックに、雰囲気の良い鐘楼堂。

鐘楼堂によじ登るキューピーさん。
キューピーさんの身体の陰に毛虫がいて、このあと驚いて落ちた。
賽銭の罰が当たったかな。

修禅寺を出て、修禅寺の門前にある伊豆最古の温泉と言われる『独鈷(とっこ)の湯』に向かう。
弘法大師が、病気の父親の身体を冷たい川の水で洗う少年を見て、「川の水では冷たかろう」と川の中の岩を独鈷で打つと、温泉が湧き出したという。
その温泉で父親の病気は治り、湯治場としての修善寺の歴史も始まったのだ。
寺は開くは、温泉は出すは、弘法大師さまさまである。
何でも作っちゃって、もう工房大師って感じ。
入浴は不可だが、手足くらいは大丈夫だろう。
あえて落ちてみれば、入浴にもなる。
タカちんがしばらく湯に足を浸けていたが、足が真っ赤になっていた。
「けっこう熱い…」

独鈷の湯から川沿いに歩いていく。
緑の中の赤い橋が印象的に映る。
きっと雨が似合うだろうな。紅葉もキレイそうだ。

竹林の小径を歩いていく。
竹林の中にはライトがあり、夜はライトアップされるようだ。

鐘楼に登るキューピーさん。
絵になる男だ。
また川を渡って、今度は石段を登っていく。
僕とキューピーさんとトモっちは石段でバテていたが、タカちんだけが平然と登っていく。4人の中でタカちんだけが若いのだ。
息も乱さず登るタカちんに対して、僕は息が上がってハアハア言ってたからだろうか、タカちんには吠えなかった犬が僕には吠えてきた。
ワン!ワンワンワン!ワン、ワン!
ホ〜〜、ホケキョ!
ワン!ケキョ!
犬とウグイスの鳴き声が響き渡る。
僕の携帯の着信音がウグイスなので、メールでも来たのかと何度も確認してしまった。
犬から逃げるように石段を登っていくとお墓があった。
「誰のですかね〜?」
タカちんが立て看板を見て言う。
僕もよく知らなかったけど、源範頼のお墓だ。
範頼は心配りの人で、兄の頼朝にも弟の義経にも気遣いをしてしまったため、頼朝に疎まれて幽閉された。
兄と弟の対立に挟まれて辛い立場だったろう。
こうして急ぎ足ではあるが、散策路を回り終えた。
駐車場に戻り、次の目的地の天城方面へ向けて出発。
「お昼はどこで食べようか?」
トモっちが、ネットで修善寺周辺の雰囲気の良さそうなお店を探して、写真付きでプリントして持ってきてくれていた。
「このお店、美味しそうだね〜。高いけど」
「こっちのお店も良さそう!」
懐石風の料理がとても魅力的だ。
お昼をどこで食べるかを話し合っているところを、運転しながら僕がぶち壊した。
「ゴメン、お昼の時間にはもう修善寺にいないと思う…」
時刻はまだ10時半で、開店は11時半からだった。
「次の目的地の滝に行ってから食べようか…」
我々は修善寺を後にした。
トモっちがせっかく調べてきてくれたのに。ああ、ゴメンよ…。
修善寺では温泉に入らなかったが、泊まりで来ればのんびり出来そうな温泉地である。
〜続く〜
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