高度が下がると民家の窓の灯りが近付いてきて、それが高速で後ろに流れていく。
機首を上げて後輪、前輪の順に着地していく。
前輪が地に着いた大きなショックの後、轟音と共に減速していく。
ゴゴゴゴゴゴ〜!!
揺れと轟音が収まり、着陸成功だ。
一時は、僕は空の上で死ぬかと思ったが、無事にホーチミンに到着した。
成田を経った時は気温6℃だったが、ホーチミンは26℃あった。
入国手続き、荷物の受け取りを済ませ、空港の外へ向かう。
窓の外が見えた瞬間、僕は驚愕した。
到着ロビーの外に、数百もの人が幾重にも連なって並んで手を振っているのだ!
その数は、飛行機で到着した人数よりも多い。
名前の書かれたボードを掲げる人、飛び跳ねながら待ち人を探す人、大声を上げて手を振る人、様々だ。
なんでも、ベトナム人は一家一族総出で空港にお迎えに来ているらしい。
なので、一人の到着を待つのに5、6人も来て待っているのだ。
その様は、ゾンビ映画を思い出す。
空港内はクーラーが効いていたが、外に出た途端に汗をかいた。

僕らは大量の荷物を2台のカートに積んで、その中を分け入っていく。
通路を塞ぐ輩は、係員がピーピー笛を鳴らして注意する。
人ごみで進めない上に、そこかしこからタクシーの客引きが話し掛けてくる。
ピッピ、ピピーッ!
プ〜ッ!プップ〜!
ボボ〜〜ッ!
ホイッスルとクラクションと人々の喧騒が響き渡る。
まるで何かのお祭りだ。
空港には、義弟の妹、つまり僕にとっては義妹が迎えに来ていた。
僕は義妹の顔を知らない。
妹夫婦が義妹を見付けたらしいが、人だかりのどこにいるのか僕にはさっぱり分からない。
どうにか人だかりを抜けると、義妹が近寄ってきた。
大型タクシーに大量の荷物を積んで乗り込み、マンションへ向かう。
日本を出てから7時間半が経っているが、時差がマイナス2時間なので深夜0時だ。
タンソンニャット空港は、ホーチミン市街の北方に位置する。
向かうマンションはホーチミンの南西部なので、市街地を抜けていく。
深夜0時だというのに、通り沿いにはけっこう人がいた。
暑くて眠れないのか、家の前に出てイスに座って話し込んでいる。
上空から見てずいぶん明るい街だと思ったが、こんだけ夜も賑やかなら頷ける。
だがそれ以上に驚いたのが、道路の交通事情だ。
日本とは逆に右側通行なのだが、僕らの乗ってるタクシーのすぐ前に、突然バイクが飛び出してくる。
しかも二人乗りだ。
いや、ほとんどのバイクが二人乗り以上である。
ベトナムでは車が少なく、その分バイク大国なのだ。
ホーチミンは砂埃や粉塵がすごいので、バイクに乗っている人は、防塵対策でマスクをしている人が多い。
大型のマスクなので、西部劇の強盗みたいに見える。
二人乗りのバイクがマスクで顔を隠し、タクシーを囲んでくる。
まるで強盗団に狙われてる気分だ。
それらのバイクがクラクションを鳴らしながら、我先にと走っているのだ。
負けじとタクシーもクラクションを鳴らす。
後ろ、前、横、いろんな方向からクラクションが聞こえてくる。
交差点が近付くが、信号はない。
タクシーはそのまま交差点に向かっていく。
交差点には数十台のバイクが横切っている。
(どうすんの、これ!?)
タクシーはクラクションを鳴らしながら、バイクの群れに突っ込んでいった。
バイクがタクシーの横から、クラクションを鳴らして向かってくる。
ぶつかりそうになりながらも、バイクはよけていった。
次々にバイクと交錯していくが、一台もぶつからない。
これがベトナムの交通ルールだ!
僕はとんでもない所に来てしまったと思った。
深夜12時半過ぎにマンションに到着。
この日は、そそくさとシャワーを浴びて寝ることにした。
だが!
暑くて眠れない…。
扇風機はあるが、クーラーはない。
窓を開けてあって風は通るのだが、いかんせん気温が高いのだ。
それどころか!
マンションの前の道は、現在ベトナムで最も大きい道路だ。
交通量も激しい。
前述の通り、クラクションを鳴らしまくるのが基本なので、夜通しクラクションが鳴り響く。
うるさくて眠れない…。
〜続く〜
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